『militant Air=FULL.』より お試し版 -02.
※注意※
この本は、BNBというパラレルのシリーズの第6弾です。
単独でも読めますが、気になる方は「BNB1-5 あらすじ」を先にご覧下さい。
尚、BNB1-5の再版・再録予定は一切ありません。
ご了承下さい。
また、メインは海城(=作中表記はセトジョー)ですが、バクラ受を含みます。
それぞれのカプが恋愛的に錯綜することは一切ありません。
完全に独立・並存しているWカプですが、苦手な方はご遠慮下さい。
※BNB1-5のあらすじを読めば分かる細々とした注意事項はここに羅列してません、多すぎて… ごめんなさい…
あと、本田と御伽の偽者率がパネェので、ご注意下さい・・・
↓よろしければ、スクロールをしてどうぞ。
■01
暦はもう六月に入っている。かつて長期赴任していた北端の公国よりは温かいが、最も多く滞在している王都周辺よりはやや寒い。なにより、抽象的な表現ならば、漂っている空気が違う。海岸線から初めてその濁った海を臨んだとき、オトギは分たれた大陸の痛みを見た気がした。
「ほんっと、どこに行ってるのさ……!!」
だがいつまでも感傷に浸っていられるほど、のん気でも悲観的でもない。
今日もまた近くで地震が起きているのを感じながら、苛立つ気持ちを抑えていた。
ここに来てからは三ヶ月、覚悟はしていたもののかなりの激務だ。その原因の大半は、現在上官として仕えている相手の身軽さにある。気がつけばふらふらといなくなり、書類一つ片付けるのにも大変な手間だ。
『……オトギ、どうしても頼めないか』
『いや、だって、僕断ったよね? 授任式の直後に』
昨年末に、ユウギの名代として授任式への列席を打診されたときは、深く考えていなかった。単に、他の人よりかの存在への知識があるため、選ばれたのだろうと思ったくらいだ。粛々と進む式を、他人事として眺める。さすがに連邦の王に対して最大の敬意を示す所作をみせたのには驚いたが、呆気に取られたままのジョーノにも言ったように、あのときはまだ不可解だと思う程度だったのだ。
かつてはいろいろあったが、それももう過去の話だ。今後、関わることはないだろう。半年ぶり見たその姿に、オトギは自分でもやや意外なほど思うところはなかった。だが授任式の直後に相談があるので執務室まで来てほしいとユーギに言われていたため、不思議に思いながら足を運べば、同じことを打診されたのだ。
『ああ、分かっている。断る気持ちに変わりはないか?』
その三ヵ月後、三月に入った頃、再び王宮で呼び出されるとユーギはげっそりしていた。風の噂でも、新任の藍東公爵サマはいろんな意味で凄まじいらしいとは耳に入っていたので、心の中でご愁傷様だと祈っておく。案の定、再び打診をされたが、オトギは首を縦に振ることはない。
『嫌に決まってるだろ、どうして僕が彼の下につかなきゃいけないのさ』
『いや、正確には、所属はゼロ隊のまま出向という形で……。』
『肩書きとかの問題じゃないって、ユーギくんも分かってるよね? 僕は、彼が嫌いなんだよ』
傷ついたような目は、当てが外れたからなのか。それとも、まだあのイレギュラーにもほどがある存在に、恋焦がれているのだろうか。王としては掛け値なく偉大だと尊敬しているのに、どうにもこのユーギはあの存在が絡むと態度がおかしくなる。
昨年の六月、イシュタール公国での任務に同行していたオトギは身にしみて分かっている。そのためかなり警戒したのだが、ユーギは声を荒げることはない。むしろ、ため息を深めていた。
『……そうか。それならば、仕方がないな』
『ユーギくん……?』
聞き分けよく納得してくれたかのような態度は、とても違和感だ。
それでも、分かってくれたのであれば嬉しい。いくら戦術官としての能力を発揮できる予定がないからといって、よりによってあの男のところに飛ばされるなんてと思っていたオトギの前で、さらさらと書類にサインをしたユーギはそっと差し出してきた。
『……なにこれ?』
『お前がどうしても嫌だと言うなら、仕方がない。王としての勅命だ』
『……。』
『リュージ・オトギ戦術官に命じる。貴殿は出向補佐官として藍東公国に赴き、かの地の公爵を助力せよ』
許されるならば、破り捨てたくなった。だが所属としても、純粋な脅しとしても、拒めるはずがない。
うっかり受け取ってしまった強制出向命令書をまじまじと眺め、やがてオトギも降参する。
『……拝命いたしました、我らが王よ』
『なあに、そんなに心配するな。あいつも少しは丸くなっている。前よりは随分と付き合いやすいと思うぜ? しっかり手綱を握って、公爵としての振る舞いを叩き込んでやってくれ』
少しくらい丸くなろうが、存在が既に特殊なのだ。更に言えば魔術も自衛程度にしか使えないオトギが、手綱を握るような真似ができるはずもない。まさに死刑宣告かと勘繰りもしたが、少しだけ胸を弾んだことも否定はできない。
あの存在は、どう変わったのだろうか。
知的好奇心が旺盛なことだけは認めざるをえなくて、オトギは四月初日からの出向を大人しく受け入れた。
「……それが、まさか、こんなことになってるなんてね」
赴任する前での予想は、藍東公国の新任公爵サマは、その傍若無人さから行政機関と対立しているのだと思っていた。
藍東公国は最も公国領が狭いが、元々自立意識が高い地域だったようで、ムトー公国に併合されていた間も一地方としての行政府は確立して機能していた。そのため、公爵とは完全なる討伐のみを請け負う対象だ。名目としてはそれが正しいのだが、伝統的な公爵家は評議会にも発言力を持っている。藍東公国と同様に一代限り公爵が赴任している西陽公国も、一応協議会という場を設けて調整を常に取っているらしい。
だが、自立性が高い藍東の評議会と、そもそも存在がかけ離れすぎている公爵サマは上手くいくはずがない。そう勝手に思い込んでいたのだが、実際には真逆だった。
「……。」
藍東公国の端、海に近い山脈の麓に居を構えた公爵サマは、赴任早々評議会に対して一切の干渉をしないと宣言した。それは逆に、評議会も公爵に対して頭ごなしの命令はできないということだ。己の使命は、ただ魔物を討伐すること。そのために、討伐組織とは多少のやりとりもするが、公国としての機能や権力には一切興味がない。
最初は戸惑っていた評議会も、本当に政治や行政にはどうでもよさげだと分かったらしく、一歩引いて歓迎をした。公爵が担うのは、対魔物の治安機能のみだ。その能力に絶大な信頼を寄せられると分かれば、この土地柄にとってこれほど望ましい公爵像はなかったのだろう。
「……だからってさぁ」
評議会としては、それでよかったらしい。もちろん予算の関係はあるので、公爵として不自由な思いをさせない程度の協力は惜しまずしてくれる。
だが実際に困ったのは、直接公爵とやりとりをしなければならない討伐組織と、中央だ。
まず、藍東公国の討伐組織は、討伐案件を上げても無視される。狩らないのではなく、狩っても報告がない。たまに確認で公邸に出向いても留守のことが多く、仕方なく書き置きを残すが返事がくることはまずない。そのため、一時は本当に公爵がいるのかと疑われるほど露出がなかったらしいが、たまに街中でも恐ろしい勢いで魔物を狩るらしく、今では存在は一応認識されている。だが、何事にも手順というものがある。討伐要件を満たしているのかを確認し、対象に目印となるフラッグを射ち、討伐計画を公爵にあげてお願いするのが本来なのだ。それを、いくら危険そうだったからといって、見境なく狩られても困る。いや実際に暴れるような魔物はほぼ間違いなく過去に討伐要件を満たしているので、心情的には助かっても、表向きは苦い顔をするしかない。
それは、討伐組織から報告があげられる中央もまた然りだ。正式に討伐したと確認されている案件は、オトギが赴任するまでの三ヶ月で、片手ほどしかなかった。相当街中か、偶然にも討伐組織の者が現場に居合わせたかでもない限り、まともな報告書類が作れない。公爵として怠慢ではないかと追及すれば、実ははるかに多くの魔物を倒していると返事が来る。ならば報告しろと言っても、公爵が非協力的なので無理だと返される。なんとかしろと高圧的に出れば、元々中央が遣わした公爵サマだろうと、逆ギレされたらしい。
「ここの民も、根性が据わってるっていうか……。」
さすがは、千年輪の公爵家がかつては治めていたお国柄ということか。
結局いろいろなことで板挟みになった結果、王であるユーギが、連邦の責任として藍東公国の公爵サマにもう少し書類というものの重要性を説くということになったようだ。それが中央から出向した補佐官なのだが、どうして自分が指名されてしまったのか、当初はよく分からなかった。
だが、赴任してみて、諦めがついたこともある。
異大陸の礎である公爵サマは、あちらの魔物か、その血を引く者にしか好意的ではない。逆をいえば、ただの人間や、こちらの魔力を持つだけの者を何人遣わせたところで、まともに認識されない。興味も持たれない。会うことすら不可能と言っても過言ではなく、そういう観点からならば、甚だ不本意ながらも自分はしっかりと記憶に刻まれているのだろう。
「……いや、それはどうかな」
たとえ不愉快な対象としてであっても、認識されている自覚はある。だが、思い返せばまともに名前を呼ばれた記憶もない。かつては間男という甚だ不本意なあだ名だったが、今では文書屋、または称号の戦術官と言われることが多いので、印象は好転しているのかもしれない。
これが、ユーギの言っていた『丸くなった』なのだろうか。
そうだとしても、別に嬉しくない。どう呼ばれようが、この忙しさが変わるわけではない。仕事の量が多いのではなく、公爵サマの所在がとにかくつかめないので一向に進まないのだという現状は、オトギに多大なストレスを与えてくれていた。
「……。」
これでも、見つければ小言も言えるし、メモを残せばたまに返事があるので、以前よりは相当改善されているらしい。数日おきに、なんとか作成できた書類を討伐組織の部署まで届けているのだが、やたら尊敬の眼差しを向けられるので、逆に三月まではどれほど珍獣だったのかと頭が痛くなったものだ。
公爵に任命するのであれば、もっとそういう仕事も徹底するように約束させてからにしてほしかった。
嘆いても仕方がないことを四月から毎日のように思っているが、泣き言を口にしても仕事が進むわけではないので、オトギは今日も黙々と職務に忠実に動いていた。
今朝は執務室に置いていたメモに返事がなかった。だが、狩をした兆候があればすぐに連絡するように頼んでいる討伐組織から、いくつかの情報が入っているのだ。それは昨日までのものであるが、本当に狩ったのであれば書類にしなければならない。その確認作業がしたいのに、今日はまだ公爵サマを発見できていない。もちろん狩りに同行できれば最もいいのだが、移動手段という意味すら不要な存在についていくのはほぼ不可能だ。
本当は、自分などよりもっと声が届く相手もいるだろうに。
そんなふうに考えてしまいそうで、ため息と共に未練を振り切る。確率は低いが、執務室に書類を置いてこようかと思っていたオトギは、開けっ放しになっているドアの向こうから漂う匂いに息を飲んだ。
「……!!」
間違いなく、血の匂いだ。喜ぶべきか、掃除を思って嘆くべきか。
微妙な感情で揺れながらも、オトギはようやく見つけた現在の上官に、淡々と話しかけた。
「……これはこれは、バクラ公爵サマ? 本日は、どちらにおいでで?」
気配が揺れる感じはなかったので、自らを召喚させるという反則的な方法で逃げられることもない。
この時間に執務室へと戻ったのであれば、もう出かけるつもりはないのだろう。そう思えば余計に嫌味が言葉に乗ったが、部屋の奥に佇んでいた男は血まみれのままニヤリと笑う。
「ああ、散歩だ」
「……。」
白い髪がべったりと血に塗れ、服もほとんど濡れていない部分がない。最初にこの姿を見たときは、どれだけ馬鹿にされようが、オトギは一瞬気が遠くなりかけた。部屋に充満する血の匂いと、掃除をしてもしてもキリがない絨毯などのシミは、もう諦めている。だからといって慣れるわけでもなく、一体どんな戦い方をすればこんな惨状になるのかとオトギは首を傾げたものだ。
召喚師や魔術師は、敵と直接接することは少ない。騎士であれば剣を振るうので返り血を浴びることも多いが、腰に提げられた公爵の証は今日も抜かれた様子はない。バクラの強さを考えれば、そう簡単に反撃などを食らうはずもなく、毎日これほど血塗れになっているのは最早ただの趣味なのだろうと思うことにしている。
「……随分と、長いお散歩だことで」
バクラの戦い方に文句を言うつもりはない、万が一にも不覚を取るはずがないと知っている。
だが、掃除が大変になることと、一人で勝手に狩をしてくるのは本当に勘弁してほしい。手にした書類は昨日までの分だが、今狩ってきたものも機嫌を損ねるまでに聞き出しておかなければならないだろう。
本当にとんでもない部署に飛ばしてくれたよユーギくん、と声に出して嘆けばまたいなくなられると分かっていたので、別の嫌味を口にすれば飄々と返された。
「こっちに来るのは、久しぶりだからな。つい珍しくなって、散策してたらこんな時間だった」
「……。」
赴任が決まってから急遽建てられた公爵邸は、こじんまりとしているが内装はそれなりに豪華だ。特に、公爵が最も滞在することになるこの執務室は、机も椅子も、すべての調度品は一級の物が揃えられている。そこに公爵というものへの公国の期待が見て取れるが、当人は気にした様子もなく血塗れのまま腰を下ろしていた。
完全に分権を容認している評議会が、予算だけは惜しみなくつけてくれることを、オトギは本当に有り難く思う。そもそもここの公邸には使用人もほとんどなく、わずかな者は別棟に住まわされている。維持管理費などは大したことないのだが、とにかくほぼ毎日バクラが血塗れで戻ってくるため、洗っても無駄な衣類を廃棄することになるのだ。さすがに公爵の証の一つであるマントだけは、予備を含めて三枚を毎日使用人が涙ぐましい努力で洗って使い回しているようなのだが、中の服はもう手の施しようがない。
「……へえ、そうなんだ。四百年ぶりかい?」
一度指摘をしたこともあったのだが、魔力で衣類を作ってもいいと返され、また溝を痛感したものだ。
オトギが言いたかったのは、そういうことではない。仮にそうして処分する服がなくなっても、血塗れで公爵が戻ってくることは周知の事実である。狩りをしなくなったのか、しているのであればどこで服を調達しているのか。どちらにしても、変な勘繰りをされるだけだ。突き詰めれば、体調がよければ食事も不要である。だからこそ、とにかく人間ではないという違和感を悟らせないことが、ユーギからの絶対条件だったはずだ。だがそれを故意に守らないのではなく、たまに本当に素で分かっていない。それをユーギも知っていたからこそ、公爵としての振る舞いを叩き込んでくれと言っていたのだと、今更のように思い知らされるのだ。
優先順位としては、衣類の件などかなり下だ。そんなことよりも、断りなく狩をしてくることをなんとかするのが急務で、せめて事後でも確認をしようと執務室に入ったオトギに、バクラは少し考えていた。
「……百五十年くらいか」
「え?」
唐突な言葉に、それが何への答えかすぐには理解できない。だが、自分が嫌味がてらにした質問、こちらに来るのが四百年前、つまり初代公爵として治めて以来なのかと尋ねたものだと察した。
特に正確に知りたいわけではなかったので、答えがあっても面食らうばかりだ。しかも、どうやら気になってしまったらしく、いきなり尋ねられればオトギも戸惑う。
「ここの公爵家が断絶したのはいつだ?」
「二百年近く前のはずだけど……?」
「……いや、そんなに前じゃねえだろ。もうちょっと続いてたはずだ」
だが思いのほか強く言い切られて、困惑は増した。
ここに赴任する前、与えられた猶予期間にオトギはきっちりと歴史なども確認してきている。
それによれば、今から二百年近く前に、藍東公国は最後の正式な当主が亡くなっている。
「あ、もしかして、ムトー公国に併合された時期のこと? それなら確かに、百五十年ちょっと前だね」
オトギは自分の知識に自信があるが、このバクラはまさに体感してきた生き字引だ。どうして差があるのかと首を傾げそうになって、ようやくその根拠らしきものを思い出せた。
この相違は、単に公爵家の断絶がどちらの時点を採用するのか、というものにすぎない。
「……そのときはまだ、断絶してなかっただろ?」
「してたよ、てことに今ではなってる。正式な当主が死んでから、なんだかよく分からない人がご落胤だとか言い張って、代行としてしばらく頑張ってたみたいだけど。結局、正式な後継者として認められないまま死んじゃったみたいだしね。公爵家として公式に認められてるのは、二百年近く前まで。まあ、一般的には公国が併合される時期と同一視もされるから、百五十年前というのも間違いじゃないかな」
「……。」
ちなみに、千年輪の公爵家が断絶したのも、純血の弊害だ。
既に近親婚が進んでおり、最後の当主は若くして突然死した。公爵家に残っていた唯一の純血を失い、公国全体が動揺する。このままでは、公国としての自立が保てなくなってしまう。そんなとき、ある女性が、実は生まれたばかりの我が子が当主のご落胤だと言い始めた。当主の年齢を考えればかなり難しい主張だったが、純血がいない公爵家も、公国全体も、その子供に賭けるしかなかったのだ。
かなり疑わしげな中央を押し切り、その子が成長するまでは公爵家の取り潰しは猶予される。やがて千年輪を持ち、召喚術が使えれば、当主の子、少なくとも純血であることは証明される。だがやはりというか、その子供が成長しても召喚術が扱えることはなかった。ただ千年輪を持っても拒絶反応だけは出なかったので、純血でも全員が操れたわけではないという言い分で、また中央を黙らせたのだ。
公国の自立という期待を一身に背負わされたその子供は、やがて心が蝕まれていったらしい。当人が召喚術を使えずとも、純血には違いないのだから子を為せば必ず召喚術が使えるはずだ。もしくは、自分の他にも隠し子やその子孫がいるはずで、そちらを探し出すまで待ってほしい。成長した男の主張は支離滅裂となっていくが、当時の連邦はさほど危険視していなかったようで、四十年ほど野放しされていた。
やがて、遂に本当の当主が見つかったとの連絡が入る。
だが半年もしないうちに、その新たな当主予定者とやらが死に、失望のあまり代行という肩書きだったその男が後を追ったことで、藍東公国の歴史は幕を下ろした。
「百五十年前にこっちに来てたってことは、その千年輪を回収に来たの?」
確か、その代行という血筋の怪しい男が死ぬ周辺でも、いろいろ凄惨なことは起きていたようだ。純血を守るということは、本当に厄介なのだろう。オトギはもっと身近で最近の公国のことに意識がいきかけるが、不機嫌そうな返事に引き戻される。
「違えよ、その代行とかいうのが後生大事にしまってやがったからな。見つける前に中央に還されて、安置されちまった。あんときさっさと取り戻してりゃあ、探す手間も省けたんだけどな」
「ああ、それもそうか」
すっかり思い込んでいたが、バクラはこの千年輪をずっと手にしていたわけではない。どうやら増幅器にしかすぎないらしく、召喚術のためだけであれば無くても困らなかったらしい。つくづく枠外の存在だと思いつつ、つい不思議になって尋ねてしまった。
「じゃあ、なんで百五十年前にここに来たんだい?」
大して聞きたいわけではなかったが、少しでも多くの会話をすることを心がけていたオトギからの質問に、バクラはどこか懐かしむ目をしていた。
「……一般的な意味の方での、公爵家を断絶させに、か?」
「え?」
「あの女殺したの、オレサマだしな」
代行は、男だった。だがバクラが言う女とは、代行が本当の当主を発見したと一度は中央に報告した者のことだろう。確かまだ年若い少女だったが、召喚術をわずかだが使えたらしい。当時は、公爵家に所以がなければ召喚術を使えないと思われていたため、それだけで当主になる資格は充分である。
代行という肩書きで公爵家を守っていた男は、妻としてその少女を迎え、子を為して今度こそ自分もまた純血であると証明したかったのだろう。
だが、少女は死んでしまった。報告によれば、自殺である。
「……えっ、まさか、暴行して自殺に追い込んだ魔物ってキミなの!?」
しかも、その理由はあまりに痛ましいものだ。公国の長となり、結婚も決まっていた少女が、魔物に辱めを受ける。それを悔いて自殺してしまい、代行もまた後を追ったというのが公式に記されていた経緯だ。
「ハ? なんでオレサマがそんなことしなきゃなんねえんだよ。大体、地下牢みてえなトコに監禁して暴行してたの、代行とかいう男の方だぞ」
「ええっ!?」
だがあっさり否定された挙句、史実として公式文書に記されていたものとはまるで違う内容に、つい驚いて聞き返せば淡々と説明をされた。
「よく知らねえけど、強引な求婚だったみてえだな。最後に好きな人と結ばれたいみたいな感じで、他の男とヤったのがバレたらしい。で、キレた代行が、さっさと自分の子を孕ませようとして連日暴行してた」
「いやいや、待ってよ、それが事実だとしてどうしてキミが首を突っ込んだのさ? それに、他の男と関係があっても、そこまでの仕打ちは飛躍しすぎだろ?」
「ああ、他の男とヤった後で、魔力が消し飛んで召喚術がしばらく使えなくなったらしい。放っとけばそのうち戻っただろうによ、中央にお披露目する前だったから代行とかいう男は焦ってて、とにかく子供を生ませてそっちが召喚術を使えるって証明するしかないって思いこんだみてえだな」
もしかすると、ヤったというよりは、本当に攻撃をされただけなのかもしれない。以前オトギもカイバ公国で目の当たりにしたように、魔物が攻撃をした場合、人の内にある魔力を消し飛ばすことがある。元々能力が低い少女であれば、まさに無くなってしまったと早合点して焦るのは分かる気もした。
だが、そこまでは理解しても、どうしてそもそもバクラが手を貸したのか。そして、少女を殺したのか。さっぱり想像もつかないと困惑するオトギに、バクラは胸に提げていた血塗れのリングを軽く握ってみせた。
「代行はな、それでも奇跡を信じてたんだよ?……いつか突然召喚能力が戻るんじゃないかと思って、毎日一回は厳重な金庫からこいつを持ち出し、女に握らせて試してた」
「……。」
「でも、女が願ってたのは、これ以上の辱めを受けたくない、死なせてほしいってことだ。このリングを握り締めて、召喚術が使える女が真摯に毎日祈ってたんだぞ? オレサマに届かねえワケがねえだろうが」
このとき、オトギはまだ確信があったわけではない。だが、召喚術とはそもそも忘陸で確立された能力ではないかという推測だけはあった。少女がわずかでもそれを使えたということは、魔力はそちらの流れを汲んでいたということなのだろう。
「じゃあ、キミが殺してあげたんだ?」
「まあな」
地下牢だろうが、自らを召喚させればバクラはどこにでも侵入できる。不可解な状況で死んでいた少女に、当時は自殺だと判断するしかなかったのかもしれない。だが納得しかけたところで、ふと疑問に思う。
「……でも、殺さなくても助け出してあげればよかったんじゃない?」
バクラであれば容易いことだったろうし、何もすすんで殺すことはない。こちらの大陸にとっては危険すぎる存在でも、あちらの流れを汲む者にとっては絶対的な希望の光だ。どうしてわざわざ殺したのか、あるいはバクラもその少女が千年輪の公爵となることを快く思っていなかったのか。いろいろと考えてしまっている間に、バクラはまた記憶を辿るような目をする。
「いや……確か、オレサマもそう言った。けど、断られたんだよ」
「そうなんだ?」
「気が触れかけてたのも、事実だ。とにかく、好きな男以外に抱かれたってのが、相当堪えてたみたいでな。死ぬことが、本当に一番の望みになってた。だから殺してやった」
「……。」
「ついでに、代行の落胤狩りでもう自分みたいな被害者が出て欲しくないとも言ってたから、女殺した後にのこのこやってきた男も殺してやっておいた」
さらりと付け足されたことも重要だったはずだが、オトギはその前の部分にまた衝撃を受ける。
この存在は、本当に最後の希望らしい。
逃げたいなら、逃がしてやる。
誰かを殺したいなら、殺してやる。
それと同じ程度の感覚で、罪を犯していない忘陸の者であっても、心から死ぬことを第一に望めばそれにも応じてやるらしい。
「……カイバ公国といい、外部の人間が公爵家を牛耳ると、ほんとロクなことにならないね」
だが、このときのオトギは、そんなバクラの存在をまだ深くは考えていなかった。
むしろ、呆れたような感想を持ったのは純血という弊害だ。カイバ公爵家は、取り潰しにこそなっていないが、セトの義父が乗っ取って連邦への反逆を企てたため、肥沃な西の大地から当時は見捨てられた土地と言われていた北端の地に領地替えの憂き目に遭った。今となっては、その混乱に乗じてセトが義父を追い立てることもできたし、北端の地をひどく気に入っている様子なのでよかったかもしれない。だがそれ結果論であり、本当に外部の人間だったのかは曖昧だが、代行という男の暴挙で狭義でも断絶を招いたのであれば、同じような悲劇だろう。
「公爵家なんざ、後生大事に守るモンでもねえのになあ」
「……さすがに、そこまでは僕も言わないけど」
珍しく賛同されても、相変わらず立ち位置が違いすぎる発言にはオトギも返事に困る。
それより気になったのは、今日はかなり機嫌がよさそうだということだ。どうやら藍東公国には、そもそも忘陸の魔物やその流れを汲む者が多いらしい。ただ狩るだけでなく、場合によっては去年のイシュタール公国のように分解して吸収しているらしい。そのため、四月に再会した当初は、オトギは一瞬分からなかったほどだ。
あれほど実体が希薄になっていたのに、今では逆に生気に満ち溢れている。
授任式の際とも比べ物にならないほど、バクラの体調は良さそうだ。
「それで、話は逸れたけど、今日はどの辺りに行ってたのさ」
「てめーが逸らしたんじゃねえか……。」
会話ができても、素直にこちらの用件に応じてくれるとは限らない。だが今日はやはり機嫌がいいのか、執務机の横に立ったオトギがすっと地図を差し出せば、面倒くさそうながらもある場所を示してくれた。
「この辺だ」
「……討伐要請は出てないはずだけど?」
「移動したんだろ、ヤツらのデータはいつもいつも古いんだよ」
「ちなみにどんな構成?」
該当の地域には、特に討伐要請が出ていない。だがバクラも言うように、魔物は常に移動しており、あまりアテにならないのも事実なのだ。仕方なく倒した構成を尋ねれば、別の地域として要請が出されていた案件だと判明する。
「あとさ、昨日までで、この中のどれか、片付けちゃったのある?」
「……。」
持っていた書類の束から、討伐確認を依頼されたものを並べてやれば、バクラはかなり嫌そうな顔をする。本人曰く、昔のことは覚えていないらしい。だが百五十年前の出来事もあんなに鮮明に話したばかりでは分が悪いと思ったのか、まずは一枚を弾いた。
「……これは違う、やってねえ」
「はい、了解」
数枚のうち、一つは見当違いだったようだ。更に別の一枚を示したバクラは、生息地域の項目を指で示す。
「……これは、怪しい。構成はかなり近いが、飛行タイプでもねえのに距離が離れすぎてる。もっと西で似たような討伐対象がいるなら、そっちかもしれねえ」
「残りは完遂? 日付は?」
「適当でいい」
不自然な日程でなければいいと任されても、上手く辻褄を合わせないと矛盾が出る。なにしろ、この公爵サマには移動距離というものがほぼ存在していない。自らを召喚するという荒業ができるため、たとえ飛行タイプの契約獣に乗って移動したとしても回りきれるはずがない範囲になることがあるのだ。
勝手に狩りに行くのも仕方がない、事後報告でも確認させてくれるならばあまり文句は言うまい。そう心には決めているのだが、相変わらず移動距離を考慮してくれていない姿勢には、つい嫌味が出た。
「あのさあ、何度も言ってるけど、キミは一応『人間』の、召喚師なんだよ?」
感覚として分からないのならば仕方がない。だが、それならせめて、不自然さが出ないように討伐の順番をオトギは練って計画書として出しているのだが、その通りに狩ってはくれないのだ。
「面倒くせえ」
「キミはそれでいいのかもしれないけどね、帳尻合わせで苦労するこっちの身にもなってよ」
バクラが計画書を無視する理由も、オトギに配慮する義理もないことは分かっていた。
だからこそ、いつもの軽口のつもりだったが、バクラは血に濡れた顔で突然ニヤリと笑う。
「……なに?」
「なんだ、そういうことかよ。何でいきなり、ココの公爵家の話をしたのかと思ってたけどよ」
「話し始めたのはキミだろ」
この仕事への出向を命じられたとき、ユーギはバクラはだいぶ性格が丸くなったと言っていた。確かに、大半の会話が淡々と交わせることを思えば、以前よりはマシなのかもしれない。
だが、決してこのバクラは自分の味方ではない。人の悪さは大陸の溝とは違う根拠だと、オトギは久しぶりに思い出させられる。
「ほんとに気になってたのは、もっと北の公国のことか?」
「ハ? 北って、カイバ公国のこと? そりゃ、さっきは引き合いに出したけど、別に……?」
「そんなにココの仕事が嫌なら、ゼロ隊もさっさと辞めてそっちに隠居しろ」
退官すれば、確かに上司としてのユーギの命令を断ることはできた。この連邦の民として、王の命令に背けるのかという問題はあるが、理屈としては分からなくもない。だが、今指摘されたのはそこではない。敢えてカイバ公国で、隠居という単語を用いたのは、特定の人物を想定して揶揄しているに他ならなかった。
「……僕は、これでも戦術官ていう仕事に誇りを持ってるんだ。そう簡単に、除隊なんてしないよ」
本音で言えば、あまり実戦にこだわっているつもりはない。戦術官として働くとしても、去年の後半はよくユウギに同行していたように、ゼロ隊ではなくムトー公国の討伐組織でも構わないと思っている。それでも、ゼロ隊に籍を残しているのは、やはり連邦の後ろ盾があった方が何かと都合がいいからだ。当然そんなことは見抜いているバクラは、声を低くして返したオトギにからかうように言ってくる。
「組む騎士もいねえってのに、どこで誇りを感じれんだよ? ただの文書屋に成り下がって、こんな辺境まで左遷されて、てめーはプライドだけは無駄に立派だと思ってたけどそれも地に落ちたか?」
「お言葉を返すようだけど、公爵様に直接お目通りが叶う補佐官で、しかもユーギくんのキミへの執着を考えれば、ここへの出向はむしろ栄転で僕はとっても期待されてると思うけどね?」
「……。」
「……。」
同じように揶揄で返せば、バクラの顔色がすっと険しくなる。やはりユーギの名前を出すのは、迂闊だったかもしれない。だが最初に傷を抉ってきたのはそちらだとばかりに睨み返せば、やがてバクラは視線を外してため息をついていた。
「……馬鹿馬鹿しい。ふられた者同士でいがみ合って、ついでにオレサマが二人分不愉快になるのはなんか悔しいよな」
どうやら、思った以上の反撃となってしまっていたらしい。いつになく憂鬱そうにぼやかれると、それはそれで険が削がれてしまう。かといって聞き捨てならない言葉もあり、何度かそれとなく説明したはずなのにと億劫になりながら、オトギは口を開いた。
「あのね、ふられたとかって、お仲間にしないでくれる? 僕はキミとは違う、彼に寄せた想いはそういう類じゃない」
確かに物珍しいタイプであり、魅力を感じていたことは否定しない。だが、かつての上官に寄せた気持ちが、恋愛感情だったのかと言われれば微妙だ。当時から、そうかもしれないとも、そうでもないかもしれないとも思っていた。今では違っていると考えているし、告白まがいのことをしたことないので、ふられたという事実はない。去年は散々間男扱いしてくれたが、そこには何の根拠もなかった。だが一度思い込むとなかなか印象が覆らないのか、バクラはかなり怪訝そうにしている。
「なんだよ、せっかくオレサマが譲ってやったのに。てめーも大概臆病だよな」
「キミに比べればほとんどの人は臆病だよ、あと譲ったつもりなんて更々なかったクセに恩着せがましく言わないでくれる?」
「譲ってやっただろうが、契約も切ったし」
「あれはキミが勝手にキレて自棄起こしただけだろ?」
「……でも、ずっと一緒に暮らしてたんだろうがっ」
「キミと出会う前まではね。あの事件の後、二度目の謹慎食らってからは彼は王都からすぐに離れたよ」
もちろん、オトギは謹慎も食らっていないし、ゼロ隊に所属していたのでずっと王都住まいである。それを教えれば、何故かバクラはかなり驚いた顔をしている。どうやら、本気で思い込んでいたようだ。誰か近況を教えてやらなかったのかと呆れてしまうが、王宮にいたときはオトギのかつての上官についてバクラの耳に入れようという勇者は、そうそういなかったのも想像がつく。
「……なんで、てめーは除隊しなかったんだ」
「え?」
きっと完璧に割り切れてはいないんだろうなあ、と王宮へと思いを馳せていると、そんなことを尋ねられた。
どうやら、勘違いはかなり深刻らしい。いや、確かに何も知らずにかつての上官が退官していれば、行動を共にしたかもしれないとオトギも思う。だがもう自分は本心を知っているのだ。
「僕には辞める理由はない、彼には辞める理由があった。それだけさ」
「……そもそも、なんで除隊したんだよ」
「体力の限界だって。まあ二回も長期職務停止食らうことになったし、復帰が難しくなるのは事実だったから、それならさっさと辞めて自由になりたかったんだろうね」
本当のところは、オトギも聞いていない。なにしろ、去年王都に帰還したのを最後に、かつての上官とは会ってもいないのだ。時折文書でのやりとりはあったが、謹慎処分中に除隊を申し出たことも、それをユーギがかなり慰留したが固辞されたことも、後から教えられた話である。そのため、又聞きではあるが、完全な間違いではないだろうという理由を答えてみれば、バクラはまた難しそうな顔をして黙った。
大陸広しと言えども、この稀有な存在に、こんな顔をさせることができるのはオトギのかつての上官だけだろう。理解したいが、理解できない。なにより、聞きたくないのに、聞いてしまう。葛藤が多すぎて複雑なことになっていると思われる現在の上官に、オトギはつい尋ねてしまう。
「大体さ?……譲ってくれたなんて言ってるけど、ほんとに僕が彼とそういう関係になってたらどうしたのさ? 認めてくれたの?」
いくらなんでも、そこまではできないだろう。そうからかっただけのつもりだったが、これは少し無謀だったらしい。
「殺してたな」
「……そんなに気軽に言わないでよ。譲った相手にむかついて殺すって、どういう理屈なの、理不尽すぎだろ」
物騒な存在であることは承知していたつもりだが、血塗れのまま、魔力があまり高くないオトギですら膝をつきそうになるほど殺気を放つのはやめてほしい。
「オレサマに理屈はねえよ、あっちの大陸の意識の集合体なんだからな」
「それ関係ないでしょ、今は関係ないよね? あっちの魔物たちが、僕と彼がどうなろうと、気にするはずがないじゃない。あのさ、ふられて傷心なのは分かるけど、八つ当たりだけはやめてくれる?」
「……うるせえな、マジで殺すぞ」
「はいはい、ごめんね、からかってゴメンナサイ。それより思い出したけど、キミ、カイバ公国には行かない方がいいんじゃない?」
どうやら、約一年前にイシュタール公爵邸でのことを蒸し返すのは、本当に生命に危機が及ぶらしいとオトギは学んだ。当時はだいぶ荒れていたが、今では公爵として落ち着いているようにも見えたので、何かしら割り切れていると思っていたのだ。赴任してから、まともにかつての上官の話題になったことは初めてだ。しかも、知っていた情報から察するに、バクラも裏ではこっそりいろいろ調べていたということもないらしい。
頭で分かっているのだろう。だが、忘れることはできない。変なところで、連邦の王と似ているなという感想も賢明に飲み込んだオトギは、まだ怪訝そうにしているバクラに慌てて説明しておいた。
「ああ、だからさ、キミが殺すなんて言うから? 彼、あっちで彼女とかできてるかもしれないだろ。ふられた腹いせで新しい恋人を殺すとか、みっともない真似はやめてね」
外交問題に発展するからさ、とオトギが続ければ、バクラは当然変な顔をする。
「……そんな物好きな女がいるかよ」
「キミに言われたくないよねえ、ほんと。でも、結構彼って女の子にモテるんだよ? ああいう性格だから、ほんとに気づいてないのか、気づいててスルーしてるのか分からないけど」
「だとしても、なんで外交問題に発展するんだ」
「ああ、知らないの?」
余裕がなさそうな態度を見せられると、ついからかいたくなってしまうのは性分だ。それを、このバクラ相手に発揮するのは文字通り命がけになる。だが本当に怪訝そうにしているので、オトギは確信がないことをさも事実かのように語っておいた。
「かの公国の公爵夫人、その妹さんが、彼に好意を寄せてるっぽいんだよね」
「……。」
まあそれは淡い憧憬のようなもので、今ではすっかり消えて公爵の弟君と恋仲ではないだろうか。
そんな心の中の予想を敢えて口にしないでいると、バクラは相当驚いた顔をした。カイバ公国の公爵夫人とはもちろんジョーノであり、その妹とはシズカだ。かつてまだセトが邪神を葬った代償で昏睡していた時期、オトギは当時の上官と共に中央からシズカをカイバ公国に護送したのが縁で、面識がある。
その際に、頼れる者がいなくていつも不安そうにしていたシズカは、オトギのかつての上官によく懐いていたと思う。だがそれも数年前の話であり、やがてセトの弟であるモクバと知り合ってからは、傍目にももどかしいような甘酸っぱい気持ちを育てていたように見えたのだ。
だが、すっかり失念していたが、バクラもまたシズカと面識がある。むしろ、オトギとよりずっと古く、そして長い。先ほど千年輪を回収した際の話が出ていたにも関わらず、すっかりと頭から抜け落ちていたオトギは、唐突な呟きにひどく驚いた。
「……そうか、シズカか。あの女、使えるな」
「え? あの……?」
面識があるからこそ、殺してやると暴れるのであれば、冗談だと言うつもりだった。だが何かを納得したように頷いている横顔に、オトギはふと思い出す。
たとえ死にたいと望まれたとしても、それが本当に心からの願いであれば、忘陸の『王』として叶えてやる。
そんなバクラは、もしオトギのかつての上官が心から誰かを愛したのであれば、それを応援できるのかもしれない。ただ、もしそうであれば、仮定の話とはいえどうして自分相手だと殺害宣言をされてしまったのか。そちらを考え出すと、結局自分は相当疎まれているという恐ろしい結論にしかならない気がして、オトギは大袈裟にため息をついておいた。
「まあ、シズカちゃんのことは、冗談だから? 本気にしないでね。大体、他の公国のことをあれこれ論じてる暇はないだろ、やることはいっぱいあるんだから」
並べていた書類を回収し、オトギはそう言う。バクラはどんどん勝手に狩りをしているようだが、それでも次から次へと討伐要請は増えていくのだ。
重複はあるだろうし、既にバクラが片付けたものも含まれるだろう。だが、いくら狩りを公爵のみが請け負っているからといって、この数はおかしい。地震も多く、澱んだ空気が立ち込めるこの公国は、明らかに何かが歪み始めている。
実を言えば、少しバクラを疑ってもいた。だが討伐組織で話を聞くうち、むしろ赴任してきてからだいぶ持ち直したのだと知る。
「……そうだな、やることは確かに山積している」
「ああ、うん……?」
さすがは公爵様だと感激していた者たちも、かといって完全に不穏な兆候が消えたわけでもないことを感じている様子だった。
まるで、緩やかに死に傾いていっているようだ。
初めて海岸線から濁った海を見たときの感想が不意に甦ったとき、突然バクラが明るく言い放つ。
「よし、リュージ・オトギ戦術官、てめーに一つ重大な任務を与える」
「……なんでございましょうか? 仕事増やすなら、せめて公爵サマを探し回る時間の削減には協力して頂けると、気持ちよく働けると思うんですけども?」
塞ぎこまれてもおどろおどろしいが、溌剌とされると妙に物騒だ。
こんな様子を、可愛くはしゃいでるなどと、空恐ろしい解釈を披露してくれていたかつての上官は、どういう目をしていたのだろう。今更のように、そちらも怖い。
だが失礼なことを考えていた罰なのか、しっかりと瞳を合わせて笑った現在の上官は、オトギにはっきりと告げてきた。
それを聞いて目を丸くした率直な感想は、最早嘆きだ。
なんということを、提案してくるのだろう。
そんな大きな罪を共に背負えと命令され、体が震えたのは、きっと恐怖からだと今はまだ言い張りたかった。
大陸の北端に位置するカイバ公国は、本来六月ともなれば平穏が訪れる。寒冷地に生息する魔物は数が少なく、また活発に活動するのが冬だからだ。
「なのに、今年はやけに多いよなあ……。」
そうジョーノがぼやいてしまうのは、決して気の所為ではない。しかも、今年の傾向が特異だという点は、発生地にも顕著に現れている。
「うん、今年は温かくなってもなかなか減らないみたいって、部署の人たちも不思議がってたわ」
「だよなあ……。」
「しかも、北側より南東側に集中してるなんて、こっちに領地替えになって以来だって兄サマも言ってたぜぃっ」
気になる点と言えば、最近は地震も多い。体感できるものでも、二日と空けずに起きているようだ。今朝も夜明け頃にかなり大きな地震があり、ジョーノは驚いて同じベッドで寝ていたセトにしがみついてしまった。
多少の違和感はあるものの、北端の地、このカイバ公国は比較的落ち着いている方だ。公国としては、特に大きな変化はない。だが公爵家に限定すれば、去年からがらりと生活が変わった。
まず、家族が増えた。ジョーノが真紅眼の黒竜のクオーターという血の濃さによって、セトのとの間に子をなした。女性化したのではなく、ジョーノがジョーノという魔物となり、セトとの交配で子孫を分化させたのだ。首の後ろにあった核は、分化されるのか、またジョーノの中に戻ってしまうのか、五分五分と言われていた。だが幸か不幸か、そのすぐ後にイシュタール公国内での作戦中に瀕死に追いやられたため、無事に分化させることができキサラという娘を得た。
そのキサラは、魔物としては青眼の白龍の血が濃いようで、生まれたときから既に三歳くらいの外見だ。三年くらいはその姿で過ごし、それからはゆっくりと成長していくだろうと言われている。魔物の血が濃いことで、やはり普通の人間とは成長の仕方も違う。それを申し訳なく思うと、そもそも授かることもできなかったので、ジョーノは夫と共によく寝る可愛い娘に精一杯の愛を注いでいる。
そんなジョーノは、ちょうど一年近く前、昨年六月の作戦を最後に、長らく務めていた王宮直属の精鋭部隊、ゼロ隊を退官している。書類上は七月末まで籍が残り、八月末からは新たな所属へと移った。それが、今もつけている腕章が示すとおり、カイバ公国の専任騎士というものだ。
騎士とはそもそも連邦が定めた称号であり、剥奪されたり返上しないかぎりは、持ち続けることができる。魔術ではなく、白兵戦を得意とする者の証明だ。多くは人間相手の警察機構に入るのだが、ジョーノのように魔力も併用できたり、耐性があったり、魔物と渡り合う能力があれば討伐組織にも名を連ねる。だが、その数はあまりに少ないため、ゼロ隊を勇退したジョーノの腕を遊ばせておくのが惜しかったらしい。
妻を危険な狩りには出させたくないし、なによりキサラを思えば育児休暇に入ってもらいたい。公爵としての合理性と、夫としての願望で大きく揺れ動いていたらしいセトだが、最終的には専任騎士に任命してくれた。その際に新たな剣も授かっているので、屋敷の部屋にはゼロ隊の現役時と、引退が決まったときの二本の剣が、今では飾られている。
「北側の方が、強い魔物は多いものね」
「だから、南東はさほど強くないはずなんだけど、急に暴れだしちゃってどうしたのかなぁ? ちょっと不気味だぜぃっ」
「……。」
セトがジョーノの前線復帰を認めてくれた要因として、今も並んで歩いている二人の弟妹の存在も大きい。
ジョーノの妹であるシズカは、去年の四月から討伐部署に身を置いて実働部隊に参加している。だが索敵と回復魔法が主であるシズカは、実はあまり出番がない。どこの公国でもそうなのだが、討伐組織で実戦を担うのはほとんど魔術師ばかりだ。そして、それほどの手練れであれば、まず怪我をしても自分で回復できる。そのため、何度となくフラッグ作業に同行しても、シズカはまともに回復魔法を使ったこともないらしい。
だが、もっと深刻に経験不足なのは、セトの弟であるモクバの方だ。こちらもシズカと同時期に学校を卒業し、大学にも微妙に籍を残しつつ、公爵である兄の行政的な仕事まで手伝っている。とにかく狩りに出る機会が少なすぎて、本人も自信がないらしい。それでも、公爵の弟君だ。公国民は期待しているだろうし、無様な真似はできない。そんな思いは、実はモクバが一番強く持っているのだろう。学校での訓練評を見せてもらったジョーノも、かなり優秀そうだが、実戦でどこまでやれるか分からないというのは素直な感想だった。
シズカを回復系魔術師とすれば、モクバは戦術系魔術師である。攻撃主体で前線に出ることはないが、かといって完全な後方支援でもない。実を言えば、騎士と最も相性がよく、補佐を期待できるのであれば心強い。そうジョーノはかつてセトに言ってみたのだが、渋い顔をしていた。まさか、まだモクバが討伐組織にも身を置くことを嫌がっているのか。そう勘繰ったが、追及すると戦術系魔術師という名称が戦術官を想起させてなんとなく嫌だという、呆れた理由だった。むしろまさに戦術官ではないかとジョーノは感心しかけたのだが、どうにも相性が悪い王宮直属の戦術官を思い出している様子の夫に、妻として必死に黙っておいてやったものだ。
そうして、ジョーノは可愛い弟妹たちに経験を積ませるため、再び騎士の剣を手にした。
だが年が明けてから、この任務にはもう一人同行者が増えることが多くなった。
「……南東、か」
今も討伐要請がされた場所に四人で向かっているのだが、何気ない話から何度もモクバがその方角を口にしたので、ジョーノはつい繰り返してしまう。
北端のカイバ公国から見て南東といういうことは、中央から見ると北東である。つい半年ほど前に公国が独立したばかりの地域であり、新たな公爵の授任式にはジョーノもセトの名代として列席した。だが、いろいろと不安要素が大きい場所であることは間違いない。ジョーノの呟きが聞こえたらしいモクバが、不思議そうに聞き返す。
「どうしたんだよ、ジョーノ? ああ、南東って言ったら、藍東公国だよな。そういや、赴任したばかりの公爵がかなり派手に狩ってるらしいって聞いたことあるぜぃっ、もしかしてそれに追われてこっちに魔物が逃げてきてんのかな?」
「……。」
「……。」
「……。」
「あれ? みんな、急に暗い顔してどうしたんだよっ」
モクバはすっかり失念しているのか、あるいは兄譲りの忘れっぽさを発揮しているのか。
少なくとも、ジョーノとシズカは、かつてセトが代償を払わせられることになる事件を引き起こした犯人として、藍東公国の公爵を解釈している。だが、ジョーノに限定をすればそれ以降も接触はあったし、なにより去年は保護観察中に連邦の王であるユーギが自ら護送して、屋敷で合流したほどなのだ。
覚えていても、わだかまりはないと思っているのだろう。実を言えば、かつて雪山でセトを殺させようとした姿と今の公爵としての姿は、もう随分と重ならなくなっている。
同じように黙り込んだシズカも、葛藤を抱えていることは知っていた。最後に裏切られ、殺されかけても、その前の数年間育ててくれた恩がある。たとえ利用するためであっても、死にかけていたところを引き取ってくれたのも藍東公国の公爵なのだ。口は悪いが、兄に会いたいと訴えるシズカの願いを結果的には叶えてくれた。そのことには感謝していると言ってしまうと、兄が傷つくと思いシズカは黙っているのだろう。
ジョーノはまだ、シズカにあの男の正体を教えていない。知れば、一貫性が無いように見えた行動が、ある信条に悲しいほど従順だったのだとは理解できるだろう。だが同時に、もう一人の同行者のことまで話さざるを得なくなるかもしれないと考えれば、今のところは教える機会がない。
「……あっ、えっと、ごめん、この話題はまずかった? わ、忘れてほしいぜぃっ」
だが、さすがにこの沈黙は異様だと気がついたらしいモクバが、慌ててそう謝る。それに、ジョーノとシズカはハッと息を飲み、どうフォローすべきかと慌てたときには、モクバの頭にポンと別の手が置かれていた。
「別にまずかねえだろ、そういう情報があるってんなら有益なんだし。なあ、弟君サマ?」
「子供扱いすんなよっ、来年には二十歳になるんだぜぃ!? ちょっと背が高いと思って、お前、前から生意気だぜぃ!!」
セトほどには身長が伸びなかったモクバだが、一般的に低いというほどではない。だが子供っぽい口調が抜け切らないためか、やはりかなり幼い印象がしてしまうことをジョーノも否定できなかった。
そんなモクバに生意気だと言われた男は、あっさりと手を離している。このやりとりを見ていると、以前、おそらくはまだセトが昏睡していた間、当時はゼロ隊の騎士として戦術官と共に長期赴任していた際にも、モクバを頭をガシガシと撫でたことがあったのだろう。
まるで場を和ませるために買って出たような仕草だったが、本当は先ほど一番黙りたくなったのはこの男に違いない。既に騎士の称号しかなく、どこかの討伐組織に正式に所属しているわけではない。書類上は昨年末までゼロ隊に籍は残っていたが、謹慎をあけずに実質解雇となってから、意外にも声をかけたのはジョーノの夫であるセトだった。
「あの、ホンダさんも、やっぱり今年はおかしいと感じてますか?」
そうシズカが話しかけたもう一人の同行者、それがジョーノの訓練学校時代の悪友であり、半年前まではゼロ隊で唯一の騎士だったヒロト・ホンダだ。ジョーノとは違い、魔物のハーフである。片方の親である魔物は、種族名もはっきりしないような特に高位でもないものらしい。そのため、ジョーノのように分かりやすく魔物に変化したり、派手な魔術を操れるわけではなく、魔力のほとんどを身体能力に転化させた完全なる物理攻撃主体だ。
ジョーノより更に濃い血を受け継ぎながら、人間であることと魔物であることを、完璧に融合させている。それは、自らの魔物の血を憎むしかなかったジョーノにとって、一種の理想でもあった。誰にでも平等に優しく、誠実だ。いつも穏やかで時々天然という大らかな男だとずっと思っていたが、それだけではないと一年前に知ってしまっている。
「ああ、どうかなあ、オレそんなにこっちにいたわけじゃねえし」
「なに言ってんだよ、今年で通算だと三年もいることになるんだぜぃっ」
「いや、まあ、そうなんだけどよ? ほら、オレ難しいことよく分かんねえから。いっつも、あれ倒せ、これ倒せ、て指示された案件をこなしてただけだからさ?」
前と違うかどうか分かんないんだよなあ、とあっさり笑うホンダに、モクバはやや呆れている。本気で馬鹿にしているわけではないのだろう。なにしろ、モクバもホンダと同行するのは初めてではない。戦闘が始まってしまえば、ホンダがあまり何も覚えていなさそうだというのは、傍目にも納得できる。
ホンダがカイバ公国に来ることになったきっかけは、ある意味においてはジョーノだ。昨年末、藍東公国の公爵授任式に名代として列席した後、戻ってきてからセトに何気なく話した。
『そういや、ホンダが遂に除隊するんだってよ』
『……そういえば、そんな話も聞いたな。新たな就職先は決まっているのか』
『決まってねえだろうなあ、つか結構八方塞だよなあ』
ユーギとユウギの慰留を頑なに固辞したらしいので、ムトー公国には居づらいはずだ。かといって、藍東公国は論外である。イシュタール公国は恩義を感じているだろうが、わざわざ中央の不興を買ってまで手を差し伸べることはしないだろう。もちろんこれは、討伐組織に所属する場合の話である。本人は体力の衰えを口実にしていたようだが、まだまだ戦えることはこの時点で半年前に目の当たりにしたばかりだ。勿体無いとため息をついたジョーノを、セトはただ眺めていた。だが次第に思案するような表情に変わっていったが、このときはまさかホンダを教官及び臨時討伐要員として雇うことを考えているなど、予想だにしていなかった。
年末までに何度かモクバとシズカを連れての討伐にジョーノは出ていたため、やはり騎士の有用性にセトは意識が向いたらしい。早速年明けに勧誘の書簡を送りつけたようだが、返事がなかったので無視されたのだと忘れかけていた。だが二週間ほど経ち、ふらりと公爵邸に現れたホンダに、セトは驚きつつも何故か厄介事を背負い込んだと直感したようだ。
ちなみに、その勘はほぼ当たっている。騎士として、また今はモクバが大学に籍を置いている総合学校の実戦担当教官としては、充分な働きをしている。だが、中央や藍東公国のような遠い地ではなく、もっと身近で微妙な空気を巻き起こしてくれている。
「でもっ、それでちゃんと討伐任務を完遂されてたんなら、ホンダさん、凄いですっ」
「へ? あ、ありがとな、シズカちゃん。キミも、随分逞しくなったよなあ。初めて会ったときは、あんなに儚かったのに」
「い、いえ、私なんてそんな……でも、そう言って頂けるなら、嬉しいです……。」
女性に対し、逞しくなったというのは褒め言葉なのだろうか。
だがどこか素直すぎるホンダの言葉を、シズカは嬉しそうに受け取っている。実を言えば、去年屋敷で合流する際にも、勘繰りはした。セトが昏睡し、ジョーノが竜となって失踪していた間、兄の友人として懐いていたらしいことはジョーノも知っている。だが、これはどう受け取ればいいのか。淡い恋心なのか、それとも単にもう一人の兄のように慕っているだけなのか。後者が濃厚だと兄として見抜いてはいるのだが、確かめたことはない。
「……オレだって、もっと実戦を積めば、任務もきっちり完遂できるはずだぜぃっ」
「が、頑張れモクバ!? オレはお前の味方だぞ、というかホンダはダメだ、あいつはダメだ!! ホンダを好きになったらみんな破滅するんだよっ、というかいまだにアレふりやがった勇気が恐くてたまんねえ!!」
「あ、あの、ジョーノ、大丈夫か……!?」
慰めるはずのモクバに心配されるほど、ジョーノはうっかり取り乱してしまった。アレってなんだよと聞き返されても、正直に答えるわけにもいかない。いや、大陸の礎だと答えたところで、冗談としか受け取られないだろう。
だが、万一口にしてしまった場合、いつも穏やかで寛容なホンダがどういう反応を見せるのか、ジョーノに確かめる度胸はない。そう体に震えが走ったとき、ホンダが低くジョーノを呼んだ。
「……ジョーノ」
「えっ、あ、なんだよ!? ……あ」
飄々とした口調とは異にしていたので、不愉快な話題だと窘められたのかと思ったが、そうではない。
生息地域として指定されているよりまだ手前なのだが、どうやらお出ましらしい。
「モクバ、情報」
「討伐対象は水属性のフェンリル、数は五。調停は不可」
「シズカ、確認」
「はい。……フラッグ、確認しました」
戦術官に近い役割分担であるモクバが、まずは簡単に討伐案件の概要を述べる。その後、フラッグ作業、つまり討伐対象であることを示す目印が既にあることを、シズカが確認した。
一応、ジョーノがお目付け役で、ホンダは教官という立場での同行だ。だがホンダに討伐中何かを教えることは期待できないと知っていたため、ジョーノが仕切るしかない。儀礼的ではあるが、戦闘に備えるためには必要な作業である。分かっていることでも、言葉に出して再度頭に叩き込む。既にジョーノもホンダも剣を抜き、ざわざわと木立が怪しく揺らめく中で、口を開いたのはホンダだ。
「……五?」
「それより、多いよな……。」
この辺りはまだ、整備された山道である。本日は討伐予定があるので通行禁止になっているが、普段であればれなりに人通りもあるらしい。そんな場所で魔物が群れ、集団で襲うという事件は滅多に起きない。セトが赴任してから、徹底して因果応報を叩き込んだためだ。
人を襲わない限りは、魔物に危害を加えることはない。
だが、人を襲った魔物は、必ず制裁を加える。
「……北側に三、南側に四。属性は同じなので、ほぼ同一種族のみの構成と思います。上空、及びその他に現在認識できる魔物はいません」
索敵を終えたシズカからの最終的な情報に、ジョーノは内心でため息をついた。
この北端の地は、カイバ公国が領地替えでやってくるまで、見捨てられた土地と言われていた。最も早く公爵家が断絶し、ムトー公国に併合されたが、中央からの距離と寒冷地という特殊性で魔物の被害がほぼ野放しにされていたのだ。そのため、悪い意味で魔物が人に慣れてしまっており、簡単に襲う。襲っても罰を受けることがなかったのだから、当然である。
それを、セトが公爵として本来のルールを再確認させた。人に危害を加えた魔物は、召喚師の名において討つ。だが公国の統治者でもあるセトは、討伐ばかりに時間をかけてもいられない。そのため、かなり古い事案の場合は、話し合いによって免責する。本来ならば狩るところだが、一度だけ見逃してやる。次はないと思えよという寛大さは、セトが最強の魔物である青眼の白龍を従えて行なえば、完全なる脅しだろう。
これを、討伐ではなく、『調停』と言う。高位の魔物ほど、人間と意思疎通が容易いため、ルールを再確認させれば群れている魔物にも自動的に伝わる。最初は時間のなさによる苦肉の策だったらしいが、現在は連邦全体での導入も検討されている。カイバ公国とは事情が違うため、そもそも加害魔物かがはっきりしない場合の、誓約確認という意味合いが強いらしい。
だが、どちらにしても、魔物に人とのルールを教え、あるいは確認することは有益だ。
『……え? なんで?』
『知らん、むしろオレが聞きたい。最近はまともに調停ができる魔物には滅多に遭遇しない。もちろん、話が通じるほどの魔物には一通り遭遇したとも考えられるが、かといって成立するかどうか以前に話し合いができんというのは、異常だ』
ホンダを臨時雇用として採用してしばらくして、ジョーノがセトに尋ねたのだ。どうして厄介と分かっていて引き込んだのかときけば、冬を過ぎても討伐案件が減らないことを予想していたらしい。ジョーノは討伐が確定した作戦にしか参加しないので知らなかったが、本来は調停もかなりの確率で行なうはずのセトがそう吐き捨てていた。
『ええっと、それは、セトの言うことに聞く耳を持たないってことか?』
セトはやはり人間であるし、魔物によっては馬鹿にしていることもあるだろう。だが、後ろに青眼の白龍を従えていれば、少しは大人しく話も聞くはずだ。
それが、昨年辺りから徐々に減り、年を越す頃にはまず調停が成立しなくなったらしい。
『そうとも言えるが、そうでないとも言える』
『どういう意味だよ?』
『……魔物が、既に言葉を聞ける状態でなくなっている。オレが人間だからとか、青眼の白龍に怯えて錯乱するだとか、そういうことではなく』
まるで正気を失っているかのようだ、と続けたセトの言葉を、最近になってジョーノは実感するようになった。
好戦的で、威嚇してくる魔物は、たいてい興奮しているものだ。だがそれで意思疎通がままならないのとは、根本的に種類が違う。セトが言っていたように、正気を失う、あるいは発狂している。そんな表現が似合うのは、えてして南方の案件だった。
「なあホンダ、お前どっち行く?」
東西に伸びる山道の両側、つまり北と南の木立の中に二手に分かれた魔物が潜んでいる。先頭をジョーノが歩き、しんがりにホンダがいたため、まだ陣形は東西だ。
モクバとシズカを間に挟むようにして互いに剣を構えたまま、ジョーノはそうホンダへと尋ねる。姿こそまだ見えていないが、確実に今回の魔物もどこかおかしくなっている気配がした。
「公爵夫人サマに任せるぜ?」
「お前が教官だろ、一応。まあいいけどよ、それならホンダは行きたい方に行けよ」
「……了解」
本来であれば、ジョーノは高みの見物をして、ホンダが実戦指示をするはずなのだが、実行できたためしはない。
今回は山道でシズカとモクバをかばうように南北に対峙し、それぞれを撃破する。どちらの群れをやるのかと尋ねれば、まだスイッチが入っていないホンダに軽くからかわれたので、ジョーノも仕返ししておいた。
やがて、ガサリと音がして、最初の魔物が木立の間から姿を見せる。
「……カイバ公国専任騎士の名においてっ、てめーらを狩る!!」
そしてジョーノの口上を合図にしたかのように、魔物が襲いかかってきた。
ホンダの口上は聞こえなかったが、そもそもゼロ隊にいたときからあまり言わない。戦闘開始だと意識が切り替わると、まともに話もできないためだ。ちゃんと打ち合わせたわけではないが、ジョーノが北へと走れば、ホンダはしっかり南へと向かう。そっちが藍東公国だしなあと、のん気な感想は持っていられないので、まずは目の前の敵に集中した。
「お前らっ、なんでそんなに凶暴化してんだよ!!」
狼の形状に近い魔物は、水辺を好む種族のはずだ。だがこの近辺には、川や湖、沼はない。水で覆われた体躯は剣の勢いを削ぎ、一撃では致命傷に至らない。飛び散った水は魔力の塊であり、そこに異質な凶暴性を感じ取ってジョーノは思わず叫ぶが、当然答えはなかった。
一歩引き、またジョーノは山道から木立へと入る。足場ならば山道の方がいいのだが、あまり下がって迎え撃つと、後ろで守ってやらなければならない弟妹と近くなってしまう。
「……チッ」
再び最初の一体に斬りつけるが、体表の水を鎧のように厚くしたらしく、弾かれたことを舌打ちをすれば後ろから声が聞こえた。
「ジョーノ、そのままで!! ……<<守備封じ>>!!」
モクバの声に呼応するかのように、強制的な咆哮を上げさせられた一体は、グンと殺気が上がる。だが、自らを守ろうとしていた水の鎧もほぼ消えている。さすがは戦術系魔術師と心の中で褒めながら、ジョーノはまずは一体を斬り捨てた。
それに動揺し、魔法とは関係なく殺気立ったのか、北側にいた残り二体が同時にジョーノへと襲いかかる。
「面倒くせえな!!」
守りに入られないことで攻撃は通りやすいが、一度に相手をするには全力で出さなければならない。それ自体は構わないのだが、ジョーノの場合、どうしても怪我が伴う。
「黒炎弾!!」
剣を右手のみに持ち替え、一体を斬りながら、もう一体へは左手を差し向ける。すっかり癖になってしまっているようで、どうしても魔力の発動には血が必要なのだ。裂けた手の平から鮮血が散り、すぐに真っ黒な炎がただの威力となってもう一体を吹き飛ばした。
痛みもさほどなく、大した怪我ではないのだが、最初に任務に同行したときさすがにシズカは動揺した。かつて雪山でもそうして戦ったので、知らなかったわけではない。だが今は治癒魔法が使えるため、慌てて治そうとしてくれたシズカをジョーノも慌てて止めたものだ。
よほど重症でもない限り、治癒魔法は戦闘後で構わない。騎士は大抵、自らの怪我も織り込み済みで戦闘しているため、いきなり治されると良くも悪くも驚いてしまう。モクバのように、敵の状態を変化させたり攻撃を援護する補助系魔法ならば問題ないが、治癒魔法のタイミングには本当に気をつけた方がいいというのを、ジョーノは最初に教え込んだ。
それを守り、シズカは戦闘中は努めて黙っている。攻撃の援護はできないし、治癒魔法もぎりぎりまでは我慢する。むしろ、新手が来ることを警戒すれば、索敵こそ最大の使命であり、今日もじっと大人しくしてくれているようだ。
「……浅かったか」
どうやら右手の剣だけで斬った方の魔物は、とどめを刺しきれていなかったようだ。まだ立ち上がろうとしている個体に、ジョーノが間合いを詰めているとモクバの声が聞こえる。
「ホンダ、下がって!! ……<<雷鳴>>!!」
南側は一体多かったため、まだ片がついていないらしい。担当の北側の三体目を確実に仕留めたところで、ジョーノはやっと振り返った。
たかがフェンリルで、しかも四体程度であれば、ホンダも後れを取ることはない。ただ、問題があるとすれば、弟妹の存在そのものだ。モクバはかなり魔術に長けているが、実戦には乏しい。シズカに至っては、自衛程度の防御魔法も使えない。
要するに、オトギやユウギ、それにユーギと組んでいたときと違い、守ってやらなければという意識が働きすぎる。
騎士の証であるはずの剣は、ホンダの腰にはない。かなり長く重いホンダの剣は、基本的には背負って運ぶものであり、あまり刃が研がれていないそれは半ば殴打用の武器だ。ジョーノのように斬ったり刺したりするのではなく、ホンダは敵を殴って潰す。魔力が身体能力に転化されているからこそできる所業でも、純粋な力の発露は魔法より見る者の恐怖を煽るらしい。
今回も既に二体を潰しているホンダは、返り血というか、やや臓物を浴びている。無言で敵へと向かう様子に、援護をしたモクバの声が届いているのかは怪しい。
「おおっ、さっすがモクバ」
残り二体のうち、片方はかなり群れを外れて山道を東から回るようにして迫っていた。ホンダを避け、モクバたちを狙ったのかもしれない。ホンダの位置からは二体とも似たような距離だったが、モクバは敢えて自分たちに近い方に<<雷鳴>>という魔法を発動させた。
これは攻撃魔法だが、あまり威力は高くない。むしろ、水属性の魔物の場合、感電を狙って足止めする用途が多い。今回もそのセオリーに則り、モクバが発動した魔法によって、その一体は発光する金の糸のような雷電に捕縛された。
「放電が収まったら片付けて!!」
その横で、ホンダは別の一体を叩き潰す。
だが、モクバの声は無駄だとジョーノは知っていた。聞こえていないのではない、この程度では届かなくなるほどではない。
ただ、従わないだけだ。
「……えっ!?」
「あっ、ホンダさん!?」
驚く弟妹たちの前で、予想通りホンダはそのまま最後の一体へと突っ込んだ。
もろちん、まだ放電は収まっていない。それに気づかなかったのではなく、だからこそ向かった。動きを封じられている最後の魔物に、ホンダは迷うことなく長剣を振り下ろす。勢いで重みを増した剣は、狼のような姿をした魔物を叩き潰すが、同時にホンダの全身も切り刻まれた。
魔物から伝染した<<雷鳴>>の威力は、かなり弱まっていたとはいえ、バチバチという耳障りな音を立てて体に纏わりつき、皮膚を薙ぐ。無数の傷が刻まれても全く頓着していないホンダは、むしろ気づいていないかのようにそのまま剣を押した。
ガッと山道に剣先が叩きつけられたときは、もう魔物も事切れている。だが、ホンダも血塗れだ。実はよくあることだったのだが、やはり慣れないようでモクバもシズカも黙り込んでいる中で、ふっと息をついたホンダが持ち上げた剣先を向けてきた。
「……!?」
「……!?」
「……お前が最後仕留めたんだし、自分で言えよ」
「いやあ、オレ、口上とかよく分かんねえしな」
弟妹は何事かと思ったようだが、ジョーノにはよく分かる。ホンダは、形式ばったことが苦手なのだ。
呆れて返したものの、すっかりいつもの調子になっているホンダにはどこか安堵して、ジョーノは自らの剣を振って血を飛ばしてから宣言した。
「称号は公国専任騎士、名はジョーノ。ここに、狩りの終了を宣言する」
「おおーっ、やっぱ、サマになってるよなあ!!」
褒められても、この微妙な空気ばかりはどうにもならない。
ホンダが我が身の危険を顧みず突っ込むのは、今更だ。魔術が使えず、魔力をそのまま放つこともあまり得意ではない。優しくて、とにかく守りたいという意識が強いからこそ、ホンダは攻撃的になる。敵が攻撃できなくなれば味方は無事だという、潔いまでの攻撃は最大の防御理論だ。
問題は、そうして守りたい対象に、ホンダ自身が含まれていないことだろう。ホンダは強いし、とにかく頑丈だ。だが怪我をしないわけではないし、いつもいつも無謀すぎるほどに突撃して物理攻撃だけで叩き潰せるとは限らない。魔物によっては相性も存在しているし、地形や天候といった要素でも本来は戦闘スタイルを変えるべきである。そんなことを全く考慮せずに突っ込むばかりのホンダを心配し、戦闘で助言と補助を行なう専門の称号を作ったのがユーギであり、また任命されたのがオトギだ。
ホンダとオトギが組むようになったのは、ジョーノがセトに嫁ぎ王都から離れた後なので、実際に二人が共に戦っているところは見たことがない。だが、かなりまともになったとは聞いていたのに、このザマは何なのだろう。年明けにこの公国で初めて狩りに同行したとき、ジョーノは随分と頭が痛くなった。実を言えば、以前よりははるかにマシなのだが、まだ呆然としているシズカやモクバを見れば、そんな比較も慰めにはならないと知っている。
「お前だって、言えばそれなりにサマになるっての。それよりホンダ、いつも言ってんだろうが? あんまり無茶すんなよ、怪我する必要なかっただろ」
本来自分はシズカとモクバを指導するために同行しているはずなのだが、何故か毎回悪友に苦言を呈する羽目になる。無駄だと分かっていても、大人として言わなければならないときもあるのだ。ほとんど弟妹へのフォローとして呆れながら言うジョーノに、ホンダは長剣を軽々と振ってから背中へと戻した。
「無茶じゃねえだろ、さっさと仕留めねえと動き出しちまうんだし」
「だからって、雷で呪縛されてるのをそのまま斬るバカがあるかよ」
「呪縛が解けてから斬ったら、逃げられるかもしれねえじゃねえか」
噛み合わない会話をしている自覚もあるが、本当はジョーノにも分かっている。
ホンダの理論は相変わらずで、単純明快だ。
守るべき対象に攻撃が及ぶ危険がわずかでもあれば、自らの被害は一切考慮せず叩き潰す。
そうして守られる方がつらいこともあるのだと、ジョーノは言ってみたこともある。だがそんなときもホンダは不思議そうな顔をして、オレが勝手にやってるから気にしないんじゃねえの、と全く分かっていなかった。
これはもう、ダメだ。本当にダメなのだ。
どれほど言おうが、ホンダに通じることはない。
ならばせめて、ホンダ自身の怪我が少なくなるように、戦術を与える。そんな方針に切り替えた数年前のユーギは、実に先見の明があったと感心する。だが、さすがのユーギでも、このホンダの気質が、ただの性格ではなく魔力の質に起因していることまでは当時は想像もつかなかっただろう。
ホンダのどこか独特な雰囲気は、ただ人と魔物を上手く融合させているからではない。
過去からの教訓で自ら作り上げた人格と、大陸を異にする魔力が、ホンダを形成しているのだ。だから諦めろとは、弟妹たちには言えない。忘陸に関わることはおいそれと口にできるものではなく、結局また不可解な状況を見せつけることになったとジョーノは内心でため息をついた。
「……あっ、あの、ホンダさん!! 治療をっ」
だが、先に我に返ったらしいシズカからの申し出に、ジョーノは慌てる。あまり距離は離れていないが、駆け寄ろうとしているシズカを先にホンダが制した。
「ああ、オレは頑丈だから別にいらねえよ」
「で、でも……!?」
「それより、ジョーノを治してやってくれ」
あっけらかんとした笑顔で断るホンダだが、血塗れだ。だが浅く肌を薙いだ多くの傷が、もう塞がっているのだろうということも予想がつく。
それはホンダの能力が高いことと、こちらの大陸の魔力を源にした攻撃が効きにくいためだ。むしろ、シズカが治癒魔法をかけたところで、ほとんど効果はない。だが効果がないとばれるのもまずいため、ここは悪友の言葉に乗っておいた。
「なあシズカ、頼めるか?」
「う、うん……。」
左手の傷は、もう塞がりかけている。放っておけばすぐに治ると分かっていたが、今は敢えてシズカの世話になった。そうして治してもらっている間にも、ジョーノはどうしたものかと悩む。シズカはただ驚いただけだろうが、モクバはそうではない。もしかすると、直前のやりとりがあったために、シズカにいいところを見せたいという気持ちもあったのかもしれない。
だが、モクバの魔法はいずれも的確だったし、何も問題はなかった。
ホンダが怪我をしたのは、どこまでも自業自得である。
それでも、モクバは自らを責めるのだろう。自分が怪我をさせてしまった、あるいはホンダならああすると分かっていてあの魔法を選択したのではないか。悩み始めると思いつめてしまうところは、セトにもよく似ていると思う。だが、セトほど良くも悪くも狡賢くないから安心しろと、励ましていいものか。ジョーノが悩んでいるうちに、立ち尽くしたままのモクバの頭にポンと手を置いたのはホンダだ。
「さすがは公爵サマの弟君だなっ。助かったぜ、ありがとう」
「えっ、あ……!?」
ハッと気がついたかのように顔を上げたモクバだが、複雑そうな顔で黙り込む。
軽く髪を撫でる仕草は、討伐前と同じだ。だが、その手はもう血に塗れている。全身を赤く染めていても、何も変わっていないかのように笑うホンダを、不気味だと遠巻きにする人間をジョーノはこれまで何度も見てきた。
「……こ、これぐらいっ、朝飯前だぜぃっ」
だが、モクバはいつもの生意気な口調をなんとか取り戻し、ホンダの手を鬱陶しそうに払う。
ただ怖いのではない、ただ理解できないのではない。
モクバの動揺の大半は、ホンダというより、自らに向かっているようだ。恋敵と認識しているのかは微妙だが、もし立ち向かうことになればどう戦えばいいのかも分からないという困惑には、心から同意できる。
「モクバくん……。」
そして、そんなモクバを、シズカもまた複雑そうに見つめていた。
元凶であるホンダは、いつものようにあまり分かっていない様子で、これがまた複雑な事態を招くんだよなとジョーノは内心でため息を重ねた。
| ▲お試し版メニューに戻る −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− <<BACK ええと。 ここまでで、既に初めて読む方は様々な衝撃の連続だった気がしないでもないんですけども!!! とにかく、セトジョーは1冊目で結婚してるんですよ。男ですけど。 で、5冊目でキサラが生まれているという衝撃・・・ つか、次の章でやっとセトも出てくるんですけど、エロだったので載せると注意喚起がめんどいからとか、そういう理由でここで切ってるので、なんかもうほんとに不可思議なことになっててすいません! これ以降は、セトも出てきます! それなりに。 バクラ受の方は、ホンバクと言い切ってもいいんですけど、なんだかいろんな意味で微妙な感じなので、まあでもホンバクです。ホンバクはエロはないです。 他にカプ的なものは、マナがマハードを慕ってたり、モクシズ風味が漂ってたりする程度です。 他の注意事項は、なんかだかやっぱり、種類は違う方向で、ホンダとオトギが偽者です。パネェです。 妄想猛々しい! ので、お付き合い頂ける方のみ、どうぞ・・・ |