■もういっかい





 目覚まし時計が鳴った。
「ん……。」
「……。」
 そのうるささに、気持ちよく眠っていた意識が引き摺り上げられる。不快そうに唸っても、起きなければならない。そのために自分で設定したのだ。だが分かってはいても眠気は誘惑が強く、二口はギュッと目を閉じて耐えてみた。もちろん音は止まらないし、視界を塞いだところで意味はない。
 寝息と変わらないほどのため息をついて、仕方なくもぞもぞと布団の中で姿勢を変える。横向きで寝るような姿勢から、一度うつ伏せになり、ベッドヘッドの先に置いた目覚まし時計へと手を伸ばす。そのとき急に体が重くなるような気がした。
「……?」
「……。」
 だがまだ寝ぼけていたこともあり、さして気にせず目覚まし時計に触れようとして、後ろから伸びてきた大きな手が先に止めてしまった。
「……あ?」
「……。」
「……おいっ、重い、バカ」
 驚きが少なかったのは、こういうことも珍しくなくなりつつあるためだ。
 そういえば、昨日も泊まっていったんだった。
 淡々と事実を思い出していれば、急にドサリと圧し掛かられる。動きにくくなったように感じたのは、単に覆い被さられたためだ。目覚まし時計を止めてからは全体重をかけられた。さすがに重いと文句を言えばまた少し体を浮かしたようで楽になるが、どく気配はない。
 眠気に負けそうだった頭も、すっかり冴えた。寝起きの悪さを知っている青根が、起こそうとしてくれたのか。先に目覚まし時計を消しても、こちらの言葉に従う反応を見せるので、とっくに目は覚めていたのだろう。寝惚けた無意識の動作には見えない。休日練習に遅れないようにという、親切で頼もしい気遣いではないことも知っていたのに、二口は手を握られるまですっかり忘れていた。
「ん? ……うわっ!?」
「……。」
「おい、だから……んっ、こら、青根……!!」
 目覚まし時計に伸ばそうとしていた手を、先に止めた大きな手がギュッと握ってくる。相変わらず体温が高いと思っている間に、その手を布団の中に戻された。
 朝の空気が冷たくて、寒いだろうという配慮ではない。布団の中で握った手を離した青根は、そのまま寝巻き代わりのTシャツの裾から差し込んでくる。さすがに素肌を撫でられて身を竦めれば、もう一方の手が腰の辺りに触れた。それに身を捩じらせるとますます両手はいやらしい意思を持って進められ、胸と下肢をまさぐられる。
「んんっ……だか、ら……やめろって、青根……!!」
「……。」
 逃れるために動こうとしても、うつ伏せの状態ではどうしても腰を上げるしかない。すると、後ろから圧し掛かるような体勢のままで、青根は今度はジャージの下にも手を潜らせて下肢も直接触ってくる。萎えているモノでも、男の性として直に擦られると反応してしまう。もう一方の手ですっかり感じやすく開発された胸を弄られると、ますます早く熱を溜めてしまう。更に後ろから耳を舐められ、荒い息が惜しげもなくかかってくるのだ。耳の裏から、首、うなじへとキスを落としながら舌を這わせられると、ぞくぞくと全身が快楽に震えて腰が疼く。そこにはまだ服越しとはいえ、既に硬くなっているモノを押し当てられて、後ろで咥え込んだ感触を二口に思い出させた。
 昨日は金曜日で、放課後には普通に部活があった。終わってから部室で着替えていると、携帯電話にメールが入ったのだ。
『……また帰省かよ』
『……!!』
 思わず呟いたのは、両親と妹が祖父母の家に行っており、帰るのが面倒くさくなったので泊まってくるという内容だったためだ。食事は作り置きされていることが多いし、二口も部活優先なので一緒に行きたかったわけではない。ただ週末はほぼどちらか一日、たまに連続して泊まってくるので、それならどうして今の新居を建てたのか、不思議になるためだ。
 だが呆れはするが、本当はかなり助かっている。いまだ会わせてはいないものの、親にもちゃんと断った上で、あくまで部活で一番仲のいい友達を泊めることができるためだ。両親も最初は会いたがっていたが、唯一遭遇したことのある妹が携帯電話に二口が送った写真を見せたためか、心の準備ができてからと言い出した。変に青根を緊張させるとまたおかしなことをされそうなので、二口としてもそれは歓迎できる。
 ともかく、この週末も二口の自宅には家族が不在だ。
 その事実を察してそわそわしている青根に、二口は少し考えてから笑顔で振り返る。
『……泊まりに来たいのか?』
『……!!』
『そっか。じゃあ、連絡しないとな』
 確認すれば、青根は相当な勢いで首を縦に振る。既に興奮している。それに、まだ部室だから落ち着けと内心で思いつつ、二口は携帯電話の画面を操作してから差し出した。
『……?』
『うちはいいけど、お前はお前の家に連絡しないといけないだろ?』
『……?』
『……なんで毎回オレが話してやんねえといけねえんだよ、たまには自分で言え』
『……!?』
 初めて青根が泊まりに来ることになったとき、二口も浮かれていて最初は気がつかなかった。だが家に上げ、当時はまだ最後までではなかったがそれなりに熱を分け合い、一段落がついたところで青褪める。
 普段の青根は、よほどのことがなければ午後八時過ぎまでには帰宅する。
 だがその日はとっくに午後十一時を回っていた。いくら青根が男で、顔が怖くて、いかつくて、たとえ学校ジャージで繁華街をうろついても誰も学生とは思わず避けて歩くような外見でも、まだ高校生なのだ。連絡もなしに帰宅しなければ、家族は相当心配するだろう。青根は携帯電話を持っていないので、急に決まった外泊を連絡してはいない。そもそも外泊の許可も取っていない。とにかく電話をしろと焦れば、青根は首を傾げた。携帯電話を差し出せば、恐る恐る数字を押していく。
 どうやら自宅の固定電話の番号らしい。さすがに家族とは会話をするようだと珍しい気分になりながら通話ボタンを押して渡そうとするが、青根は受け取らない。不思議そうに首を傾げるだけだ。それにまた困惑し、早くしないと家族が電話に出てしまうと不安になったところで、実際に繋がって二口は焦った。
 結論から言えば、青根の親は、実に青根の親だった。
 会話はできる、だが何かがずれている。普段より三時間も遅くなってから、帰宅ではなく電話をし、しかも友人にそれを説明させることに違和感がないらしい。元気ならいいのだと明るく言われ、仲良くしてやってねとお願いされて電話が切れた。青根は一度も話していない。それでも、信じられるというのは、息子への信頼なのか達観の境地なのか、かなり困惑したものだ。
『青根たち、帰らないの?』
『……!!』
『オレは帰りたいんですけどね、こいつがどこに帰るのか、決めるの待ってるんスよ』
『……!?』
 青根の両親は常識人でもあるらしく、何度か泊まってから御礼として高級な菓子折りと丁寧な礼状を息子経由で贈ってきた。ただ、菓子折りはともかく、礼状は和紙に包まれており、中身はやたら横に長く毛筆で縦書きだった。達筆すぎて逆に読みにくく、二口は一瞬果たし状かと怯える。だがなんとか解読すれば純粋な礼状と分かり、それはそれで息子の字の汚さとの差に困惑したものだ。
 ともかく、最初に甘やかしたのがいけなかったのか、二度目からも外泊連絡は二口がしている。電話に出るのは母親が多く、たまに父親も出たが、どちらも会話には困らない。だが息子が電話口に出ずとも不審がることはなく、最近は名乗っただけで用件を察してくれるようになってしまった。
 一日に一度まともな言葉を発するかどうかというレベルの青根なので、下手をすればその両親との方が二口は交わした言葉の文字数は多いかもしれない。すっかりそれが標準だと思っている節がある青根に、躾をしてやろうと急に思い立ったのだ。
 泊まりたいなら自分で連絡しろと、携帯電話を差し出せば青根は当惑する。
 声をかけてくれた茂庭にすがるような視線を向けたが、優しさをかけられる前に二口はぴしゃりと言っておいた。
『それじゃ、長くなりそうだよねえ。……鍵渡すから、明日は来るよな?』
『あざーすっ』
『……!!』
『じゃあ、戸締りはよろしく』
 携帯電話を青根に差し出すことで何かを察したらしい茂庭は、部室の鍵を渡して先に帰って行った。
 他の部員たちもいなくなり、二人きりになると静けさが募る。これは持久戦になりそうだ。二口としても青根の家に電話すること自体はさほど嫌ではないので、折れてやることは構わない。だが、そのときはそれなりの見返りが欲しい。青根が頑張って電話をして、その珍しい光景を眺めるのでもいい。
 しばらく待っていれば、やがて青根は覚悟を決めたように手を伸ばしきた。
 携帯電話を持つ二口を、ギュッと抱きしめる。そして、耳元で囁いたのは『いっぱいする』であり、それ嬉しいのも助かるのもお前じゃねえかと言いかけた唇を塞がれて二口は久しぶりに部室で押し倒された。
「なん、で……お前、そん、なに……んんっ、んぁ……!!」
「……?」
「朝、から……元気、に、なっ……て、んぁっ!? ふぁ、アア……ん、あ……!!」
 昨日は、結局部室で三度はされた。せめて先に外泊の連絡をさせろと思ったが、その気になった青根を止めるのはなかなか難しい。
 なんとか夜の十時には部室を閉めて帰路についたが、コンビニで食事を買い、二口の家で食べ、風呂も済ませてさあ寝ようとベッドに上がれば当然のようにまた組み敷かれた。
 今回は特に冷戦だったわけでもないし、三日前にも一度している。さほど禁欲生活を強いられていたはずではないのに、青根はやたら旺盛だ。さすがにベッドでは二度で止めてもらい、意識を失うようにして眠ったが、朝になれば仕切り直しだとばかりにまた触れてくる。どれだけ絶倫だと呆れればいいのか、それでも青根に触れられれば反応してしまう自分に絶望すればいいのか、よく分からない。とにかく寝起きでまさぐられ、二口もまた息が上がってきたとき、目覚まし時計がけたたましく鳴り響いた。
「……!?」
「……だから、上のボタン押すだけじゃ止まらねえって、いつも言ってんだろ。裏のスイッチ切らねえと、五分おきに一時間は鳴るんだよ」
 さすがに驚いたようで、青根の手も止まる。それに深く息を吐いて二口は説明した。
 二度寝防止の機能は珍しくないが、何故か青根は覚えてくれない。自分がきちんと一度で起きられるので、そんな機能自体が世の中で必要なことがまだ信じられないのだろう。朝に強いのは素直に凄いと思う。だがその青根が、初めてのデートのときは楽しみすぎて前の晩になかなか眠れず、朝は朝で寝過ごしそうになった。あれはかなりの珍事であり、また自分の存在が与える影響の大きさを示された気がして、後から面映くなったものだ。
 それはともかくとして、今は再び鳴りだした目覚まし時計に感謝し、二口はもう一度手を伸ばして今度はスイッチを切っておく。そして大きく肩で息をしてから、青根の下でゴロリと仰向けになった。
「……。」
「青根、おはよう」
「……。」
「おはよう」
「……おはよう」
 言っても頷かれるだけのことがほとんどだが、今朝はやや後ろめたさもあるのか、それとも単に機嫌が取りたいだけなのか、挨拶が返ってきた。それだけで胸が弾むほど嬉しくなるが、二口は同時に呆れもした。
「お前、また裸で寝てんのかよ……。」
「……?」
「下着ははいてるとか、そういうことじゃなくて。もうだいぶ寒くなってんだし、ちゃんと着てから寝ろ。風邪でもひいたらどうすんだよ」
「……。」
 言ってはみたものの、残念ながら馬鹿は風邪を引かないので危機感を煽ることはできない。だが万一ということもあるし、朝からいろいろと落ち着かないので寝るときはちゃんと服を着てほしかった。
 体温が高く暑がりの青根は、寝るときはやたら薄着だ。家でも裸族なのかと呆れれば、ちゃんと着ているらしい。つまり、自宅では空調や布団などで調整している。だが二口の家に泊まるときは、たとえ来客用の布団を用意してやっても青根は絶対にベッドに上がってくる。一緒に寝たがって譲らない。結果的に、自分が暑いからといって布団を減らしたりすれば二口が寒がるだろうという配慮で脱ぐらしいが、青根がいると人間湯たんぽになるし、大半はやはりヤった後に服を着るのが面倒くさいだけだろう。
 理由はどうあれ、今朝も見上げた青根は肩も腕も衣類がなく、裸のように見える。部室で着替えているのが目に入っても何とも思わないのに、自分の部屋で、しかも起き抜けにこれは刺激が強い。躊躇いつつも素肌の背中に手を回せば青根が喜ぶのが分かったが、二口はまだ許していない。
「それと。……オレ、寝てるときとかに手ぇ出すなって、言ってるよな?」
「……!?」
 回数を重ねていくうちに二口の体力が限界を迎え、意識が曖昧になる分には構わない。だが、そもそも最初に二口が寝ており、そこからまるで夜這いじみたことはするなと言い聞かせていたはずだ。
 こちらは少しくらい気にしていたようで、だからこそ目覚まし時計が鳴って、二口が手を伸ばして止めようとするくらいには覚醒するまで待っていたのだろう。だが二口にしてみれば、まだ寝惚けているような段階だ。しっかりと釘を刺してから、二口はギュッと青根の体を抱き寄せた。
「……!?」
「……お前としてるって気づけねえの、イヤだ。いつも言ってるじゃねえか」
「……!!」
「ヤりたいなら、ちゃんとヤれ。オレが知らないところで、勝手にオレとするんじゃねえよ、バカ」
 嫌がるのは、みっともないくらいの嫉妬だ。認識できない状態でされるのは、青根とのセックスを一回分損した気になって悔しい。するならちゃんとしたいと訴えれば、青根はしっかりと頷いた。寝癖のついた髪を梳くようにかきあげて、まずは額にキスをしてくる。
 先ほどのような、後ろからされるのもかなりぞくぞくする。気持ちがいいことには変わりない。だがやはりまだちゃんと向き合って確かめ合いたい段階の二口には、顔が近づくだけでドキドキして、唇が触れたところから熱が上がっていく気もした。
 目蓋の辺りから頬へと、徐々に近づいてくるのがどうしようもなく期待を煽る。無意識のうちに薄っすらと口を開け、赤い舌先でねだるように待っていると、焦らすことなく深いキスが施された。
「んんっ……ふ、んぁっ……!!」
「……。」
 舌を絡め、唾液を混ぜ合うようなキスに没頭していれば、再びシャツの裾から手を差し入れられた。
 寝起きの愛撫ですっかり硬くなっていた乳首を、指先で転がされ、キュッと摘まれる。昨日から刺激され続けたそこは痛いくらい敏感になっているのに、反射的に鼻から抜けるような声が漏れた。
「ふぁっ、あ……んん……!!」
「……。」
 体を竦め、思わず青根の背中に爪を立てる。手入れをしているので決して長くないものの、少しくらいは痛いはずなのに、青根は文句を言ったことはない。単に鈍感なのかもしれず、あるいは興奮しているので気がつかないのかもしれない。もっとありそうなのは、それを二口の反応の基準にしているようで、気持ちいいらしいと認定された愛撫はしつこいくらいに続けられてしまう。
「あ……んぁっ!? こら、青根……!?」
「……。」
「だから、あんまり、時間が……んんっ、ん……ひ、あぁっ……!!」
 首元までシャツを捲り上げると、まだ弄られていなかった方の乳首にいきなり舌が絡められた。驚いている間にたっぷりと撫でられ、口の中に含むようにして吸われる。ビクッと派手に腰が揺れるほどの快感が走り、恥ずかしいくらい声が漏れてしまう。だが動揺する間も与えられないほど、青根の熱い舌で苛められ、もう一方も指で捏ねられた。
 同時にされると、快楽の高まり方が早くてどんどん熱を上げていく。浅い呼吸は喘ぎと変わらないほど濡れ、気持ちよさを隠せない。
 だが、青根は変に冷静というか、体は興奮していても思考が残っていることが多い。普段あまり使わないので、ここぞとばかりに脳が頑張っているのかもしれない。このときも、たっぷりと胸への愛撫を施そうとしてくる青根に二口がつい窘めたことを、ちゃんと聞いていた。これから起きて食事をして、休日練習に向かわなければならないのだ。してもいいがさっさと終わらせろという文句を言った二口に対し、青根は正確に理解していた。むしろ、自分がそう促した自覚が乏しかった二口は、再びジャージの下へと潜り込んできた手が性器を通り越してその奥に触れてきて、ひどく驚いた。
「んぁっ……!?」
「……。」
 仲直りをして以降の行為では、青根が慣らしてくれている。そんなところを触らせるのは忍びないと思っていたのは最初だけで、潤滑剤をたっぷり纏わせた指が侵入するのもまた愛撫なのだと教えられた。
 軽く入り口を撫でた後は、迷うことなく指が入れられる。今朝のようにほぐれた余韻があれば、青根はすぐに指を増やし、内壁を擦り上げるのだ。そんなところまでは教えていないはずなのに、太く長い指を遠慮なく蠢かされて、心地いい箇所を探り出された。図体の割りに速くて器用という評価を持つ青根は、こういうときでもすぐにそこを刺激することを学び、強すぎず、弱すぎず、そこだけではギリギリ達せないくらいの刺激をする。
 しかも、今朝は胸への愛撫も続行中だ。回数を重ねたわけでもなく、むしろ性急なくらいなのに、二口はしっかりと快感を育てられていく。ただやはりそれが急激すぎて、酸欠の頭はやや混乱していた。
「んんっ、ふ、ア……アァッ、んん、あ……!!」
「……。」
「あぁっ……や、あっ……んん、んぁ、ア……!!」
 覆いかぶさっている青根の体に、そそり立った先端が当たって擦られる。直接の愛撫は最初だけだったにも関わらず、すっかり先走り液をこぼすほど感じ入ってしまっていることが、本当に恥ずかしい。
「んんー……!!」
「……?」
 酸素が回らない頭で気持ちばかりが焦っていた二口は、自分が何をしているのか分かっていなかった。きっと、上がる声も恥ずかしかったのだろう。青根の背中から外した片手で、自分の口元を押さえる。声を我慢しようという無意識の行動に出ると、ぴたりと青根の反応が止まった。
「ん……んぁっ!?」
「……。」
「……あお、ね?」
 後孔から指が抜かれ、思わず残念そうなくぐもった声が漏れた。だが胸からも顔を上げた青根が、いきなり口を塞ぐ手を掴んできたのだ。
 驚いている間に強引に外されて、二口は久しぶりに青根を見上げる。すると、興奮の中にもどこか拗ねたような色が滲む瞳で、青根は見下ろしてきていた。
「青根、どうし……?」
「……ききたい」
「……!?」
 いつものように黙ったままだとぼんやり見上げてきたところに、不意打ちのように言葉が降ってきて二口は震える。
 今朝は、もう二回も聞けた。
 嬉しくなって自然とはにかんでいく二口に対し、青根はまだ拗ねた様子で上体を落として抱き締めてくる。
「んっ……。」
「……声、ききたい」
 しかも、ギュッと腕を回しながら耳元で囁かれたのだ。二人の腹の間で挟まれたモノが弾けそうになった。だが下着越しでも相当な熱を持っていると分かる青根のモノで軽く擦られ、この剛直で得られる快楽をイヤでも思い出させられて、二口はごくりと喉が鳴る。
「ん……青根、はやく……。」
「……声」
「いっぱい、聞かせてやっから……んぁっ、ア、ああっ……!!」
 抱き返しながら囁けば、珍しく青根は不満そうに念を押してきて、それだけでまた出してしまいそうだ。嬉しくて笑いそうになったところで、互いの下肢を覆う衣類を適当に取り去って、青根が押し入ってきた。
 青根が声を聞きたがるのは、ちゃんと二口も気持ちよくなっているのかを確かめたい欲求も大きい。快楽が溜まりすぎて声が出なくなると、不安そうに愛撫を強めるという逆効果ばかりしてくれたので、二口もその辺りは分かっているつもりだ。
「ひぁ、んぁっ、ああ……ア、あぁ、んんー……!!」
「……。」
 だから恥ずかしくてもわざと聞かせてやっているのだとでも思わなければ、抑えきれない嬌声に耐えられそうになかった。
 指でたっぷり慣らされていたおかげで飲み込むことができた青根のモノは、かなり大きくて正直苦しい。だが指では焦らしていた箇所を、括れで擦り上げるようにして何度も突いてくる。更には奥までずっぷりと咥え込まされると、苦しさの中に違う快楽が沸きあがってくるのだ。
「あお、ね……んぁっ、ア、あおね、あおねっ……!!」
「……。」
「オレ、もぅ……んんっ、んぁ、あ……あ、アァ、んあああぁぁっ……!!」
 潤滑剤が立てるグチュグチュという粘着質な音にも辱められながら、二口はあっという間にのぼりつめた。堪えきれなかった白濁の液が、二人の腹の間で散らされる。回していた腕にギュッと力を込めてしがみついた二口に、やはり青根は文句を言わない。
 ただ、満足そうに二口の前髪をかきあげてきて、まだ呼吸が整わない唇の横にキスを落とした。
 達したことで緊張し、やがて弛緩した二口には、後孔で咥え込んでいる青根のモノは弾けていないことが分かる。それが悔しい。なんとか出させてやろうと、キュウッと締め付けてみれば、逆に自分が煽られてしまった。
「……!?」
「ん……青根、も……はやく……。」
 イッてほしいと、荒い呼吸の合間に途切れ途切れに言ってみれば、青根が深く息を吐いた。
 呆れたため息ではない、気合いを入れる仕草のようなものだ。ゆっくりと期待を高めていけば、やがてもう一度唇にキスを落としてから、青根は本格的に腰を進める。
「んんっ……んぁ、あ……ア、あぁっ、んん……!!」
「……。」
 出したばかりなので少しだけ余裕がある二口は、しっかりとしがみついてその律動を受け止めた。
 青根が、気持ちよくなってくれるのが嬉しい。
 青根が、自分として気持ちよくなってくれるのが、本当に嬉しい。
「あおねっ、あお、ね……んぁっ、アア……!!」
「……!!」
 布団をかぶったままでしていると、まるで動きに制約があるかのように密着してしまう。普段よりは動作としては小さかったかもしれないが、繋がっている実感はより大きくて、出したばかりの二口もすぐにまた軽くイッてしまう。
 今度は耐える気がなかったのか、それに合わせるように青根も達してくれた。奥に熱いものが叩きつけられた気がする。ちゃんと青根も気持ちいいのだと分かると、また気持ち良くなってしまい、一度始めるとなかなか終えられないのは少しくらい自分にも責任があるらしいと、二口もようやく認める気になった。








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