【お試し版】
『紅恍のエンブリオ』収録-03.







※注意※



この本は、リア=グリフというパラレルシリーズの第2弾(続編)です。
本の中に前作にあたるリア=グリフ本編+後日談のあらすじが収録されています。
ただ、「リア=グリフ本編+後日談」の再録本『環 蒼天 リア=グリフ』も発行しています。
再録本を同時購入予定の場合、
これ以降のお試し版は再録本のネタバレになります。

ご注意下さい。












































■01-02






 この世界では、動植物を除けば生命体は三種類に分けられる。人間、魔物、そして両方の因子を持つ亜人だ。魔力という次元の違う高出力エネルギーを操る魔物は、人間とは明らかに異質な存在である。だがそこに分類される魔物は個体数が非常に少なく、また能力差が激しい。高位な魔物ほどより稀少であり、人間がちょっかいを出さない限りは滅多に遭遇もしないので、一般的には神や悪魔よりは身近で、自然災害などよりは遠いという認識が広まっていた。
 その中間とも言える亜人は、長らくマフィアの道具のように扱われる時代があったが、現在ではそれのみのコミニティを形成し、絶対中立の立場を宣言している。もちろん、亜人だからといって必ずしもそこに住む必要はない。山本のようにマフィアと契約していたり、あるいはその父親のように過去の功績から永住権を与えられている場合もある。だが多くの土地では亜人は一時的な滞在しかできないため、出稼ぎに行くような感覚だ。若いうちにできるだけ稼ぎ、やがてまた亜人のコミニティに戻る。結婚をしていれば伴侶もコミニティに住むことが認められ、また子供に因子が引き継がれて元亜人という状態になった者も引き続き面倒を見てもらえる。山本のように、生まれてからこの方、一度もコミュニティで過ごした記憶がないという方が、珍しいのだ。実際には生まれてから数日間は滞在していたのだが、さすがに覚えているはずもない。並盛を半周するように北東から南西にかけて囲む山脈を、更にずっと北上した先にある亜人のコミュニティは、山本にとっての故郷ではなかった。
 そういった亜人たちが、マフィアに対して完全な不可侵を勝ち得たのは、当然ながら持ちえた力のためだ。魔物ほど強大ではないが、人間とは比べ物にならないほど大きい。扱いづらさもあって地位は低いままだが、マフィアがこぞって契約したがり、戦闘に借り出したのは当然の流れだった。
「……まあ、それも今は昔、か」
 だがそんな長い時間をかけて亜人たちが得た歴史が、ここ数ヶ月という勢いで崩されつつある。それはもちろん、ジェッソ・ファミリーに代表されるリングと匣を用いた新しい戦闘の形のためだ。
 ツナたちにも説明したように、それこそ古くはマフィアの黎明期から半ば伝説としては存在していた。リングに関しては、本来の能力ではなく、儀式的な価値として受け継がれてきた物も多い。ボンゴレリングも、その一つだ。代々ボスと守護者に託されたという七つのリングは、単なる歴史的価値や装飾品としての評価だけではなかったのだ。人間の内にある気のようなものを、炎として具現化させることができるという認識が広まったのは、奇しくもジェッソ・ファミリーが戦闘員に装着させて実戦で示してからだ。
 元々、魔物が持つ魔力は、人間も多少は持つとは言われていた。だが亜人を除けば、人間の魔法使いはいない。この矛盾は、どうやら人間は持てる力の吐き出し方を知らないという状態だったようで、閉ざされた蛇口を開く道具が、リングだったということだ。では魔力と死ぬ気の炎は別物かと指摘をすれば、そうとも言い切れない。亜人でも使える者がほとんどであるし、公式には発表できないが魔物も自在にリングを操っているのだ。しかも属性が人間のリングと同じ分類ができるということは、逆に極めて近しいものだと断言できる。
「……。」
 獄寺としては、魔物が操る魔力と、人間の持つ死ぬ気の炎は、井戸水と水道水のようなものであると考えている。井戸水は、そこに井戸があれば枯れない限りわいている。水道水は、すぐそこまで水がきていても蛇口が壊れていると出てこない。魔物がリングを操れるのは、井戸に汲み上げポンプをつけた程度のことなのだろう。そうして出てきた水は、多少の性質の差はあっても、互いに応用力が大きい。潜在的な量や一次利用にはやはり井戸水が適しているが、水道水は加工が楽なことと純度で能力差を補っていると言えた。
 つまり、匣兵器の存在だ。これにより、炎をリングによって灯すことができるようになった人間は、飛躍的に多様な攻撃力を得た。焦ったのは、亜人たちである。圧倒的なパワーも、馬より早いスピードも、唯一亜竜にだけ許された空中戦まで、人間が匣を使うことによって簡単に凌駕してしまえるようになった。ただ、浮上に関しては、やはり亜竜に分がある。補助的な飛行用の匣兵器では、蓄炎に限界があり、長時間の移動は無理だ。また高度に関しても上昇した際の様々な不具合に対する対応が出来ないため、移動手段としての亜竜の地位はしばらく揺らがないだろう。
 とはいえ、亜人たちは自分たちの存在意義を奪いかねないリングと匣の台頭に、かなり脅威を感じているようだ。だが殲滅といった極端な思考に走らないのは、亜人もまた魔力を持つため、リングや匣を使えるからである。もちろん、人間の死ぬ気の炎を想定して作られたものであり、精神的な鍛錬が出来ていない亜人には扱いづらいことが多いようだが、単純な発動条件ならば簡単に開匣できる。そのため、亜人たちも過剰な反応はせず、とにかく人間たちに出し抜かれないようにと積極的に技術の習得に励んでいるというのが、獄寺が大陸で感じた現状だった。
「……。」
 それには、獄寺も理解を示す。いくらリングや匣があっても、身につけていなければ人間は脆い。絶対的な強度で、魔物や亜人には敵わないのだ。確かにこれまでほど亜人の絶対的な優位とはならず、淘汰はされていくだろう。だが、亜人が必要なくなるということはない。これまで長い共闘関係で築き上げられ、互いにこれは補完し合えない領域が、確実に残るからだ。
 そのため、リングや匣を得たからといって、亜人たちへの処遇をすぐにどうこうしないというボンゴレ本部の方針は、獄寺の考えと一致している。更に、その代わり亜人たちにも扱いを徹底させるという方針が両翼となっていることは、ますます都合が良かった。
 現在、ジェッソとジッリョネロによる混乱が起きているのは、大陸だ。だがそれはいずれ、並盛などの島しょ群にも波及していき、近い将来必ずそのうねりに飲み込まれる。獄寺は、模擬戦ではあるがリングを匣を用いた戦闘を大陸で何度か経験した。率直の感想としては、これまでの火薬や殴打系の武器に頼った戦い方とは、明らかに異なっていた。
 このままでは、まずい。
 獄寺は半年前に初めて出張したときに、そう青褪めたものだ。並盛は大陸からも離れ、情報が遅れがちな分、万一リングや匣を駆使した敵対ファミリーの襲撃を受ければかなりの損害を受ける。壊滅するとまでは思っていないが、民間人を巻き込んだ総力戦になる危険性が高く、並盛のように伝統的に地域と一体化したところではそれでは勝っても負けたようなものだ。それを回避するためにも並盛に当然リングや匣を配分すべきだと主張したとき、東端の中継地で会っていた本部の幹部たちは難色を示した。正直、いかに次期ボスがいる地とはいえ、危機に直面しているのは自分たちだと怪訝に思ったのだろう。
 その後も何度か中継地での会談を重ねたが、埒が明かなかったので何度目かの出張で獄寺はボンゴレ本拠地のある町まで乗り込んだ。病床にある九代目との面会がかなったのは、ツナの父親でもある門外顧問の口添えが大きかっただろう。だがやはりまだまだ稀少だったリングや匣を出し渋る本部で、獄寺はできることは何でもした。絶対に自ら口にしたくなかった実家の名前までちらつかせ、なんとかそれなりの数を引き出したときには、達成感の直後にひどく落ち込んだものだ。いかにツナのためになると信じているからとはいえ、実質的に既に関わりがなく、口利きすらできない実家の名前に頼らなければならない自分の無力に、歯痒さは募るばかりだった。
「……まあ、それもあるんだろうな」
 リボーンたちは謙遜をただの口先だけだと思ったようだが、獄寺はツナの守護者というものに対して、現在の自分が相応しい実力だとは到底思っていない。もちろん指名されれば光栄であるが、山本の件と二分して正直に力不足を実感しているのだ。それでもツナたちが打診をしてくれるのは、リングの性能以外では、完全にその肩書きだ。大陸での交渉に難儀している獄寺に、次期ボスの守護者なのだと箔をつけてやろうという、心遣いに他ならない。
 実際に、肩書きというものの大きさは、獄寺はこの半年で嫌でも実感させられた。騎竜兵はエリートであるが、あくまで戦闘における兵種にしかすぎない。軍隊でいうところの、階級ではないのだ。また大陸では騎竜兵、特に亜竜の種族と性能が並盛とは違うため、戦闘要員として有能だという認識が低い。知識がない者は、獄寺をただの通信兵と思っている節もある。それでも昨年の夏の武勇伝は尾ひれ背びれがついて広まってはいるようで、通信兵に毛が生えた程度の戦闘員がどうしてそんな活躍ができたのか、つまりは亜竜が特殊で異常に強かったのだろうと解釈されているのだ。そのため、獄寺よりも山本の方がある意味では有名で、変な注目も集めている。パートナーが認められるのは嬉しい反面、獄寺の劣等感を煽って仕方がなかった。
 確かに、山本は強い。仮に亜竜でなかったとしても、あの剣技は戦闘要員でも随一だろう。
 更に、亜竜としての能力は最大限まで引き出せる状態にあるため、旧来の戦闘では一騎当千も過言ではない。
 その自覚もあったからこそ、獄寺は自分自身もリングと匣の習得には熱心になれた。名実共に、山本のパートナーとして釣り合う実力が欲しかったのだ。その心がけがよかったのが、獄寺は比較的炎を灯すことは早く、匣兵器の扱いも慣れてきている。だが能力を伸ばすのにここにきて制約をかけているのは、やはりリングの精度だと気持ちが堂々巡りに陥った。
「……。」
 獄寺の手には、今回譲渡された物の中から一番先に支給される形になった新しい嵐のリングが収まっている。ツナの執務室を出て、重いカバンを訓練棟に運んだものの、新しくできたリングと匣の専門部署の場所が分からなかった。だが行けばなんとかなるかと思い、本営の建物の二階から階段を下り、一階の渡り廊下から訓練棟に入ってみれば、すぐの部屋がその部署になっていた。
 新兵器管轄と真新しいプレートがかかった部屋は、出撃時の備品庫の一つだったはずだ。そこを一部屋分空けたということは、それだけ新兵器という言葉でまとめたリングと匣の重要性を認識しているのだろう。まだできたばかりの部署ということで、扱う数は少なくとも、その整理や配分、なにより訓練指導の要領作成などで数人の事務官が右往左往していた。そこに獄寺が、これまで大陸からもたらされた全リングと匣の数に匹敵するほどの量を持ち込めば、事務官たちは輝かしいような、残業が決定して泣き笑いのような、微妙な表情を浮かべたものだ。
 それでも、獄寺が苦労して海を渡ってきたということは承知しているのか、既にツナたちの許可を取っているといえば事務官たちはすぐに支給手続きをしてくれた。おかげで新しい嵐のリングは正式に獄寺のものになったものの、心配がなくなったわけではない。
「これで、耐えられりゃあいいんだがな……。」
 ツナたちにも見抜かれていたように、以前大陸から譲渡された16匣の解明が進まないのは、それまで獄寺が持っていた最低ランクの嵐のリングでは、次々と開匣していくたびに増える炎の量の負荷にリングが耐えられそうになかったからだ。
 通称、パズルの匣と呼ばれ十六個で一つのセットになっているが、根幹に据えられているのは複数の匣だ。それらを開匣し、基礎として発動し続けたまま、他の匣を開けて付加価値で変化をさせていく戦法では、どうしても嵐の炎が膨大となる。それが、最低ランクの嵐のリングには荷が重かったのだ。
 おかげで実戦ではもちろん、解明を進める訓練段階でも支障をきたしていたので、少し精度のいいリングを入手できたことは今回の収穫だ。どこまで活用できるかを試すのは明日以降の訓練になるだろうが、手っ取り早く確認したくなった獄寺は、廊下を歩きながら一つの匣に新しいリングを押し当てていた。
「……おおっ」
 訓練棟から、本営ではなく医療棟へと入り、そこを抜けて宿舎へと戻る。個人的な荷物だけはもう運び入れている部屋は、今年から二階に移った。一階の一時滞在者用も兼ねている部屋よりは随分と広くなったのは、獄寺が昇進したためではない。元々そのクラスを使用できたのに、面倒だからと一階を希望していただけなのだ。それを本来使用できる中で一番広いものにしてもらったのは、今年に入ってから宿泊していくことが多くなったパートナーに配慮したためである。以前はやはりベッドがシングルサイズだったので、二人で寝るにはやや狭かったのだ。
 帰還した際、本営の一階で受付にツナの不在を確認した獄寺は、荷物だけ先に自室に持って行った。そのとき、無意識にでも少し期待してしまっていたが、山本がしばらく部屋に来ていないことは空気の淀みですぐに分かる。獄寺が居ない間も好きに出入りしていいと伝えてあるのだが、獄寺の気配が残る部屋は逆につらいようだ。だが今回は出立前にややもめていたこともあり、それも理由で山本は部屋に来なかったのかもしれないと思えば、獄寺は億劫になった。
 それからツナの執務室に向かい、しばらく待ってから帰ってきたツナたちを話をして、訓練棟に向かった。その帰りである獄寺は、廊下でなんとなく開匣してみた匣から飛び出した仔猫に、わずかに口元を綻ばせる。
「ああ、やっぱりちょっとデカイな。瓜、お前もそう思うだろ?」
 リングが新しくなったことで炎の供給がスムーズになったのか、瓜と名付けた嵐猫は、心なしか以前より少し大きく見えた。そのことに安堵し、獄寺は廊下でしゃがんで瓜へと手を伸ばす。
「おあっ!? ……ったく、お前は、ほんっと懐かねえな」
 だが久しぶりに出してやったにも関わらず、全く感謝した様子のない瓜は獄寺の手を軽く引っかくと威嚇の唸り声をあげ、くるっと踵を返して走り去ってしまった。移動中はやはり出しておけないので、ずっと閉じ込めておくことになったのがかなり気に入らないらしい。元来匣兵器とはそういった意志とは無関係らしいが、多少の性格や個体差はある。瓜はその中でも、勝手気ままさではかなりの上位だろうと獄寺はため息をついていた。
 外に出れたことが嬉しいのか、瓜は軽快に廊下を走ると医療棟から飛び出していく。以前は焦ったものだが、追いかけなくても炎が切れかければそのうち戻ってくる。どこかで勝手に食事をもらってくることも多いし、本物の猫と違ってトイレの心配がないで放置していてもいいだろう。なにより、並盛ではまだまだ匣兵器が珍しいのだ。当初はかなり異様な姿の猫に驚いていた並盛のファミリーたちに、匣兵器と接し、どういうものか慣れさせるいい機会にもなる。
 そんな自己欺瞞で放置しているのは、追いかけるのも面倒くさいし、捕まえようとすれば反撃されることも多いためだ。誰かに迷惑をかけていれば回収しようという程度で、疲れた体を押して獄寺は歩き続け、医療棟を抜けようとする。
「……ギャアアア!?」
「あ?」
「お、おいっ、隼人!? お前の猫がっ、猫が、このっ、くそ、引っかくんじゃねえ……!!」
 だが渡り廊下から宿舎に戻ろうとしたところで、早速瓜は他人に迷惑をかけていたようだった。それでも、相手がシャマルだったので無視しようとすれば、今度は何故か瓜が獄寺の手に噛み付いてくる。
「ああ、もう、疲れてんだから暴れてんじゃねえよ、瓜……。」
 払おうとしても気力が足りなかった獄寺は、そう緩慢に手を振るが、ガブリと牙を立てたままの瓜はそのままぶらんぶらんと振られるがままだった。
「おい、隼人、だいぶ血が出てるけど大丈夫か……?」
 それに、先ほどまで瓜に襲われていたシャマルは、怪訝そうに尋ねてくる。言われてみれば、少し痛い。引っかき傷程度ではなくなってきているようなので、ちゃんと止血しなければと思えば、また億劫さが増した。
「大丈夫じゃねえだろうな。ったく、このバカ猫、誰に似たんだか……。」
「隼人、ちょっと医務室来い。手当てしてやっから?」
「……。」
 そんなことよりも、早く部屋に戻って休みたい。だが、もしかすると山本が訪ねてくるかもしれないと思えば、手から出血したままだと相当動揺させてしまうだろうと想像ができ、獄寺はため息をつきつつ素直に頷いておいた。






 医療棟の一階に専用の医務室を構える医師の一人であるシャマルは、本来ボンゴレのファミリーではない。トライデント・モスキートを操るフリーの殺し屋が、おそらくは本業だ。だが昨年この並盛に招聘されてから、本来の任務が達成された後もこうして残っている。女性しか診ようとしないという欠点はあるものの、やはり医師としても優秀であり、大陸での事情にも精通しているのでツナやリボーンたちからも信頼が厚いようだ。
 そういった一般的な事情とは別に、獄寺はこのシャマルと因縁が浅くはない。元々は、獄寺がまだ実家にいた頃に、城の専門医を勤めていたのがシャマルだ。そこを見込まれて、まだ山本が以前の体であった際に、表向きは引き離し工作の説得要員として並盛に呼ばれたのだ。結果的にはそれは成功せず、むしろ裏の特命を発揮することになりその腕の確かさを証明したが、本人はいたって飄々としたものだ。山本が魔物から亜人に戻るためのヒトの因子の移植をしたのがシャマルである以上、獄寺としても深く感謝はしている。だがやはり古い付き合いでどうしても素直にはなれず、いまだに憎まれ口を叩く関係は変わってなかった。
「それにしても隼人、早い帰還だな。予定では、確か、日曜くらいじゃなかったか?」
 女好き故に女性患者しか診ないと公言しているシャマルではあるが、獄寺とは腐れ縁であるし、何より診ないと突っぱねると変に懐いているパートナーの方がシャマルを無言で責めるらしい。いかにシャマルでも亜竜の潜在能力に怯えているのか、単に山本が扱いづらく苦手なのか、比較的こうして手当てもしてくれていた。
 医療棟の端から廊下を戻ってシャマルの医務室へと入り、獄寺は瓜に噛まれた手を処置してもらう。簡単な消毒の後、薬を塗ってガーゼを当て、テープと包帯で留めるという簡単なものだ。瓜も部屋にはついてきているが、獄寺が開匣時の最低限の炎から追加しなかったためか、すぐに動力源が尽きてきたようでグルグルと唸りながら床に丸まっている。
「用さえ済めば、あっちに長居してる理由はねえからな。珍しく天候が良くて、行程が順調だったんだよ」
「そうか、それはよかったな。ところで、あっちの様子はどうだ?」
 何気ない世間話を装って切り出したシャマルだったが、おそらく気にはなっているのだろう。フリーで活動していたということは、マフィアに所属しているよりもずっと顔見知りも多い。そうでなくとも、やはりリングや匣といった新兵器に興味をそそられるのは当然で、獄寺は先ほどと話がかぶると思いつつ、口を開いていた。
「まあ、余計悪化してるって感じだな」
 もちろん、ツナたちと話すほど詳しいことは言えない。だが話しても支障がない限りで、獄寺は淡々と説明をしてやっていた。
 リングや、匣のこと。
 ジェッソ・ファミリーよりも、ジッリョネロ・ファミリーに今は戦々恐々としていること。
 明日には幹部報告会があり、そこで並盛もなんらかの決定はしなければならないこと。
 言葉にしているうちに、頭の中が整理されてくる。だがそれはいいことばかりではなく、先行きの不安さを暗澹と示しているようにしか獄寺には感じられなかった。
「……なるほどな。なにより、ジッリョネロ・ファミリーの目的がいまいち分かんねえってのが恐いな。ああ、そういやあそこのボスは歴代女で、えらいべっぴんさんだったなあ」
 だが同じように神妙な顔で聞いていたシャマルが口にした感想はそんなもので、獄寺は思わず座っていた丸椅子から落ちそうになった。それを察したのか、瓜まで珍しくシャマルを威嚇するように床で声をあげている。やはり、シャマルは生粋の女好きらしい。そうと呆れてしまってもよかったのだが、どうやら情報が遅れているらしいシャマルに、獄寺は一つ教えてやっていた。
「たぶん、それは先代だな。ジェッソとキナ臭い噂が立ち始めた矢先に急死して、娘のユニってのが今はボスになってる」
「ああ、そうだったのか。でも、あの先代の娘なら、かなりの美人だろう?」
「……まあ、いずれそうなるのかもしれねえけど、オレは会ったことないしな。なにより、十歳かそこらの子供って話だ。美人て評価が妥当かは、年齢的に微妙だな」
 可愛くないという噂は聞かないので、シャマルの言葉を一概に否定は出来ない。だが可愛かったとしても、マフィアとしてはその点はあまり関係がないのだ。気にしているのはシャマルぐらいだろうと思っているので適当に返せば、ようやくシャマルも渋い顔になっていた。
「さすがにそれは、オレも守備範囲外だ。熟女には味があるが、幼すぎるとまず女として見れねえ」
「……珍しく、テメェが真っ当に見えた貴重な瞬間に立ち会ったな」
 獄寺は幼い頃に実家を飛び出したこともあり、類稀なる美貌とやらを実母から引き継いだことで思い出したくもないような危険な目には何度も遭遇したのだ。もちろん手にした火薬ですべて蹴散らし、事なきを得たが、そういう目で見られたというだけで獄寺にとっては屈辱である。よって、男女の性差がまだ出ないような時期の子供に欲情する大人は極端に敵視する傾向が強いので、本当に珍しく、シャマルを尊敬できていた。
 だが獄寺が心底褒めているのに、シャマルは微妙な表情のままだ。どうやら素直に受け取れないらしいが、軽いため息一つでそれを流すと、話を本筋へと戻していた。
「けど、ボスが子供だってのは引っかかるよな。ほんとにそのユニって子供が、ジッリョネロを指揮してんのか?」
 シャマルの疑いは、当然だ。もちろん、子供だからといって能力がないわけではない。例えばツナも、次期ボスとして内定したのはもっと若い頃なのだ。また、窮地にあるファミリーほど、子供などを神格化して一致団結しようと持ち上げる傾向もある。
 だが、ユニがそうであると言い切れないのは、先代のボスが戦死したわけではないからだ。どうやら急な病に倒れ、数日後には逝去したらしい。しかもその頃はちょうど、連合しているのかと思われていたジェッソ・ファミリーに対し、ジッリョネロ・ファミリーのボスを先頭とした主流派が合併を拒否して反旗を翻した時期にも相当するのだ。そこにきて対ジェッソの急先鋒だったボスが急死するという事態は、何らかの策略だと考えるのが自然だろう。シャマルの言いたいことを汲んで、獄寺は返していた。
「ジッリョネロは、今でこそ中堅規模だけど、歴史は長いからな。ボンゴレの守護者に相当する者がいて、その六人は健在だ」
「確か、マーレリング、だったか? それを持つ猛者たちは、一応新しいボスである子供を担いだのか……。」
 ユニはあくまで傀儡で、本当はジェッソと統合したかった勢力が内紛を起こしているのかとも当初は思われた。だがジッリョネロはユニをボスに擁してからも、ジェッソとは反目し合っている。それでいて、他のファミリーとも戦闘をしているのだ。傀儡であることは真実かもしれないが、その場合、裏で操っている者があまりに意図が不明だというのが、大陸での一般的な感想のようだった。
「その中でも、電光のガンマ、幻術を操るらしい幻騎士ってのが、かなり曲者だ。リングと匣の扱いにも長けてるし、少人数で襲撃しても食らったファミリーはどこもかなりの打撃を受けてる」
「大変なことになってんだな、あっちは。大体、ジッリョネロってのは何がしてえんだ? ジェッソを追い払いたいならジェッソと戦えばいいのに、なんで関係ないファミリーを襲ってんだか」
「……。」
「……おい、隼人?」
 そして、当然の反応で話を締めたシャマルに、獄寺はしばらく黙ってしまった。そう、その点はまだ判明していない。ツナたちと話していたとき同様、正確なことはユニたちにでも聞かなければ分からないだろう。
 だが、ボンゴレを含め、これまでジェッソ以外で襲撃されたファミリーの状況を分かる限り分析してみると、いくつかの共通点がある。そこから、ボンゴレ本部では内密にいくつかの仮説を立てていた。もちろん、それはまだ真偽が証明されていない。だが最悪の説が正しかった場合、獄寺の心的疲労が更に増すことは間違いなかった。
「……いや、なんでもねえ。ジッリョネロの目的は、ボンゴレ本部でもまだ分析中なんだ」
「そうか。まあ、目的なんか、あってないようなものかもしれないしな。カリスマを持った先代ボスが謎の死を遂げ、担ぎ出した子供でまとまりきらなかったファミリーが、ジェッソに吸収されるならいっそ、て、自棄になって暴れ回ってるだけかもしれねえし」
 気にしてもしょうがないか、と続けたシャマルの説が、実は最も有力である。だが裏を返せば、対処は相当厄介だ。通り魔と同じで、理由も時期も推測できないのでひたすら防戦一方となる。仮に反撃をしようにも、ジッリョネロは中堅なのだ。たとえボンゴレでも、全面衝突をすれば双方にかなりの被害が出る。そこをジェッソに狙われるかもしれないと思えば迂闊に反撃できないというのは、ツナたちとも話したとおりだった。
 獄寺は、こういった、どうも目的が分からないという類の行動が嫌いだ。いろいろと勘繰りすぎて、最悪のことを想像して勝手に苦しくなっていくからである。そういう自分の損な性格も充分把握しているので、想像はあくまで推論にとどめ、事実として確認されている事例は頭の中で別にしておく。そうして一定の心の安寧を図ろうとするが、シャマルの何気ない言葉でそれはまたグラグラと揺さぶられた。
「……ところで、隼人には念のため耳に入れておくことにするが。リングだの匣だののおかげで、変な煽りを食らってるぞ」
「あ?」
「山本だ。リングも匣も使いこなせねえ幹部が、新兵器を過大評価することで亜人の価値を相対的に下げようとしてる。大陸ほどじゃねえが、こっちも亜人に対する潜在的なやっかみは上層部ほど根強いようだな。ツナの守護者に自分がなって当然なんつう自意識過剰ならまだマシで、自分の実力不足は認識しときながら、亜人が選ばれそうになると足を引っ張るのに老人たちは必死だ」
「……。」
 そのことは、獄寺も当然分かっていた。だがこんなふうに直接指摘されたのは、初めてにも近い。ツナたちに山本の推薦をしても、まだ難しいだとか、幹部の了承が取れそうにないという曖昧な言葉で濁されているのだ。その裏には当然、山本が亜人であることに対する抵抗があると知っていたが、ツナたちは獄寺の気持ちを慮ってか、あまりはっきりと言ってこなかった。
 だが並盛の医務室にずっといるシャマルには、ツナたちとは違う情報網があるのだろう。山本が昨年夏に英雄と祭り上げられ、獄寺がツナの信頼を得て大陸との橋渡しという重要な任務を担っていけばいくほど、戦闘の第一線から退き経験という価値だけで幹部の座に居座り続けている連中が内なる敵となっていく。もちろん経験は貴重だ、どれだけ金を積んでも得られるものではない。だが時間は流れていくものであり、過去の経験を現在に生かし、変化に対応して柔軟に考え方も変えていけないのであれば、ただの思い出話に過ぎない。本人の中だけで美化された武勇伝に付き合っていられるほど、今のマフィア界は平穏ではないのだ。
「明日、幹部報告会なんだろ? 隼人はほんっと短気だからな、挑発されてすぐキレたりすんじゃねえぞ?」
「……分かってるての、そんなことは」
「ああいう、口だけの幹部にはハイハイて適当に話を合わせて、年は取ってても頭が現役の幹部とだけ膝詰めて話し合えばいいんだ。使い分けっていうか、処世術というか、そういうのは隼人は嫌いだし苦手だよな? 大切なパートナーを馬鹿にされてるみたいで腹が立つのは分かるが、簡単にはキレるなよ? キレるなら、作戦として。それが山本のためでもあるんだからな?」
 お前がしっかりしろとポンポンと頭をはたかれ、獄寺は鬱陶しそうに払いのけつつも、ようやく気がついていた。
 出張に行っていた獄寺が帰還したことで、近いうちに幹部報告会が開かれるのはシャマルも容易に想像できたはずだ。瓜に噛まれた傷を手当てすると誘ったのも、実はこの忠告がしたかったのだろう。言われれば獄寺も当然心得ていた内容ではあるが、覚悟までできていたかとなると確かに微妙だ。
 もし獄寺が老害だと思っている数名の幹部から、面と向かって公然と山本の守護者指名を批判された場合、頭に血が上らないでいられる自信はない。だが、そういうこともあると腹を括って臨まなければならない時期にはあるのだ。シャマルの指摘は実に的を射ており、獄寺は深呼吸をしてから、しっかりと自分の中に刻み付けていた。
「……まあ、大丈夫だ。最終的には、十代目も雨の守護者には山本しかないと思って下さっていると信じてるからな」
「ツナもつらい立場だよな、ほんと。まあそれはそうとして、疲れている隼人には、もう一つ苛々する話題だ」
 そして、なんとか消化したと思ったところで更にシャマルからそう切り出され、獄寺はあからさまに嫌な顔をしてしまった。
「まだ何かあんのかよ?」
 つい慳貪に聞き返せば、シャマルも呆れつつ話してくれたが、それは既に獄寺が心得ている件だった。
「ほら、ツナにぞっこんの女の子がいるだろ? あの子が……。」
「……ああ、また今日ハルが山本と会ってたって話か」
「なんだ、もう知ってんのか。さすが耳が早いな」
 感心しているシャマルの方が、どうして知っているのか疑問である。だがシャマルは独自の情報網があるようなので、出所はさして気にならないものの、獄寺はため息を重ねてしまった。ツナの執務室で話したときも気が重くなり、繰り返し話題にしたいものではない。それを暗に示す意味も込めて殊更大袈裟に息をはいたつもりだったが、シャマルにはどうやら通じていないらしい。
「隼人、嫉妬深い男はウザがられるぞ? 山本が隼人に一途なのは明らかだろ、それにハルだってツナ一筋だ。主婦の井戸端会議みたいなノリなんじゃねえのか? 浮気なんか絶対しねえんだし、友達として遊ぶくらいは寛容さを見せてやったらどうだ?」
「うっせえな……。」
 確かに、シャマルの言葉も一理ある。山本は本当の意味で心を許せる友人が少ないし、獄寺への想いの深さを思えば浮気など心配のしようもない。ハルも山本を誘惑する気は更々ないのは周知であるし、安全牌には違いない友人まで付き合いを規制するのは、束縛しすぎだと言われても仕方がないだろう。
 だが、この件に関しては獄寺も譲るつもりはない。それを、シャマルも知っているはずだ。それでいてこんなふうに助言してくるということは、例の件を軽視しているからなのか。そんなに簡単なことではないのだと内心文字通り苛立った獄寺は、先ほどまでとは変わり、かなりぞんざいな口調でシャマルへと返していた。
「ほっとけよ、オレはあの女を山本には絶対近づけたかねえんだよ。山本は、バカだからな。そのうち勝手に傷つくのは明らかなんだから、今のうちから離しておいてやるってのが、恋人としての情じゃねえか」
「それ、山本には全然伝ってねえようだぞ?」
「伝える気はねえからな、別にこれでいいんだよ、オレたちは」
 そう吐き捨て、獄寺は椅子から立ち上がる。それにシャマルが何かを言いかけたところで、医務室のドアが勢いよく開け放たれていた。
「だから隼人、あのことは……?」
「……なあっ、オッサン!! 獄寺が帰ってきてるって聞いたんだけど、どこ、に……?」
「……!?」
「おお、山本じゃねえかっ。見てのとおり、お探しの愛しの隼人はここだぞ?」
 ノックもせずにガラッと廊下側からドアを開けたのは、山本だ。言葉から察するに、獄寺が帰還しているようだと知り、探していたのだろう。おそらく、ツナのいる執務室と、宿舎の部屋は見てきたはずだ。そこにいなかったので、他に行きそうな場所を知っている相手としてシャマルに思い至り、こうして訪ねてきたらしい。
 だがここに獄寺がいるとは思っていなかった様子の山本は、廊下に立ったままかなり驚いた顔をしていた。もちろん、獄寺も驚いている。そうしてしばらく二人とも無言で見詰め合ってしまったが、獄寺の高鳴る鼓動も何故か山本が一瞬顔をしかめてふいっと視線を逸らしたことで急激に冷え固まった。
「……あ、えっと、獄寺ここにいたのな。オッサンと、話とかしてた? ごめん、邪魔して」
 そして、おどおどとそんなことを言い、部屋の中に入ってこようとしない山本は獄寺との約束を思い出したのかもしれない。もちろん、人前では獄寺の不在を過度に不安がらないというものだ。それは再会してからの過剰な歓喜も自制するように申し合わせているため、忠実に振る舞おうとしているように見えなくもなかった。
 だが、そういった喜びを無理に抑えているのとは違うと、獄寺は直感的に見抜く。今山本が目を合わせてこようとしないのは、後ろめたいことがあり、獄寺に怯えているようにしか見えない。その原因は、直前までシャマルと話していたことしか思い浮かばず、獄寺は苛立ちが増してつい慳貪な口調で切り出してしまった。
「……山本、お前また約束破ったそうだな」
「え?」
「あの女と、また会ってたんだろうが」
 そう言ってやれば、驚いたように顔を上げた山本が、さっと顔色を変えた。どうして知っているのだと言いたげだったが、少し考えれば動向調査員から報告がいったことは理解できたのだろう。だがその謎が解ければいっそう怪訝そうな顔をした山本は、やや拗ねたような口調で言い返してくる。
「……だって、ハルは友達だし。今日は帰りにたまたま会っただけなのな」
 待ち合わせをし、率先して会いに行ったわけではない。その事実は獄寺も心得ていたが、たとえ偶然でも許せない。何より山本がまだハルを友達だと思っていると分かり、疲労と苛立ちは獄寺の中で振り切れてしまった。
「だからっ、あの女と関わるなって言ってんだろうが!? いいか、何度も言わせてんじゃねえ、街中で見かけても無視すりゃいいだけの話だろ。さっさとあの女とは縁切れよっ、もう二度と会ったりすんな!!」
「ごく、でら……。」
 つい声を荒げてしまえば、山本はかなり呆然とした様子で獄寺を見つめてきていた。その瞳は理解できないと如実に示しており、純粋な疑問は獄寺を責めているようにしか感じられない。
 だが、これは正しいことだと獄寺は信じている。あの女と、山本は関わるべきではない。そこに揺らぎのない獄寺がじっと睨み返してやれば、山本は獄寺の足元へと視線を落としていた。
 そんな状況を見て、この医務室の主であるシャマルが、仲裁を試みる。
「おいおい、隼人、何もそんな頭ごなしに言わなくてもいいだろ? ほら、ちゃんと山本にも分かるように……?」
「余計なこと言ってんじゃねえよっ、ヤブ医者!! これはオレと山本の問題だ、関係ないヤツが口出しすんじゃねえ」
「隼人、お前なあ……?」
 シャマルがわざと軽い調子で呆れてみせるのも、なんとかこの場の空気を和ませようとしているのだということは、獄寺にも分かっていた。だが、獄寺にも譲れないことがあるのだ。思わずシャマルにも声を荒げれば、獄寺の足元にやった視線をうろうろさせていた山本が、やがて顔を上げると引き攣ったような笑みを見せていた。
「……ごめん、オレ帰るな」
「おいおい、山本も真に受けんなって? ほら、隼人も帰ってきたばっかりでちょっと疲れて気が立ってんだよ、な?」
 そして、シャマルの引きとめも聞かずに山本はドアを閉めて廊下を走り去ったようだった。
 再び二人となった医務室には、気まずい空気が流れる。自分が悪いわけではないと獄寺は思っているが、山本は確かに傷ついていた。それが気になってついため息と共に床に視線を落とせば、いつの間にか炎が切れかかった瓜が追加をねだるように足元に体を摺り寄せていた。
「なあ隼人、大丈夫か?」
「……。」
 その瓜の首根っこをつかみあげ、わずかに炎を与えてやればゴロゴロと喉を鳴らして喜んでいるようだ。獄寺の気が立っていることは察しているのか、瓜はちょっかいを出すこともなくまた床へと下りて、医務室の隅に寝転がっている。
 そんな様子を眺めながら、獄寺にはシャマルが尋ねた意味を正確に理解していた。
 獄寺は、本当に大丈夫なのか。
 山本のパートナーとして、守ってやってれるほどの器があるのか。
「……当たり前だろ。オレは、あいつの運命の騎手なんだからな」
「隼人……。」
 だがシャマルの言葉の真意には気づかなかったことにして、あくまで恋人同士の痴話喧嘩を心配されたかのように、獄寺は強がって答えておいた。
 それ以上はシャマルも何も言わなかったので、獄寺は医務室から出て瓜と共に宿舎の自室へと向かう。
 大丈夫、きっと大丈夫だ。
 なにしろ、自分は運命の騎手だ。亜竜である山本が、一生慕い続けると約束された存在なのである。
「……大丈夫だっての、オレたちは」
 半ば自分に言い聞かせ、獄寺は階段を使って二階へとのぼり、自室に戻った。
 こんな些細なことで、自分たちの絆が緩んだりはしない。
 そう信じてまずはシャワーを浴びたが、結局この夜、山本が獄寺の部屋を訪れることはなかった。














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ここまでが40ページです。
なんかこう、ここまでだと痴話喧嘩メインぽいですが、痴話喧嘩しつつ戦ってるいつもの(?)パターンのような、うん、まあガンマさんたちとは戦います。
バトルの意味で(笑
あと、ハルは(他のキャラも)別にカプ的に獄山に絡むことはないです(笑
ハルはツナが好きです。でもツナは京子ちゃんが好きという原作仕様で…
あと、軽くガンマはロリコンぽいですが、それも原作仕様ってことで、見逃してもらえたら嬉しいなあ…!!!
相変わらず山っこが獄寺さんスキスキ病を発症してるので注意…
あと、山っこはドラゴンに変身するので注意…