今日も今日とて、晴天日和。
ウサギな妻が住んでいるのは、7階建てマンションの5階である。

ピンと伸びた真っ白な耳。
ふわふわと丸まったキュートな尻尾。
弾むような足取りで、旦那様の帰りを待つ。

「んー。んー?」
オタマに掬った味噌の味を確認し、微妙なダシの足り無さに首を傾げる。旦那様はイタリア人のクオーターであり、殆どをイタリアで過ごしてきた明らかに日本人ではない旦那様。些細な味噌の味など分からないが、それでも美味しいモノを食べさせたい。最愛の旦那様なのだから。
そう、繰り返すが、旦那様。
「へへ」
照れくさそうに笑い、ガシガシガシとみそ汁をかき混ぜる。
派手にかき混ぜ過ぎて豆腐がガンガンと崩れていっているが、ウサギは気が付かない。
旦那様。
そう、もう既に6回は繰り返しているが、ウサギには旦那様がいる。
同い年の、獄寺隼人という名前の旦那様。
「へへへへへ」
ぴょこぴょこと耳が動き、楽しそうにウサギは笑みを浮かべる。


ある日、起きたらウサギの耳と尻尾が生えていた。


このマンションだったのが僥倖だろう。
何故早朝にここにいたのかは深く考えてはいけない。高校生男子が友人宅に泊まることなど特別な話ではないではないか。
まあ、ぶっちゃけ愛し合っていた訳だが。
吃驚して言葉も無かった山本の前で、更に言葉を失っていたのが獄寺だ。
そして直後、目を輝かせた。
輝かせて、一言。
「結婚するぞ、山本!」
断る謂われもなく。

獄寺は旦那様で。
山本は奥様なのだ。





山本は部活が終わり次第、すぐに獄寺の家に帰ってきてこうして支度をしている。
並盛中のクラスメイト、あるいは部活連中は、山本に耳があっても、あるいは尻尾(これはズボンの一部分だけを丸くくり抜いて出している)があっても「山本だしな!」ですませてくれる良い連中だ。
当初、山本が学校へ通うのをヨシとしなかった獄寺だったが、
「野球がしたいのな!」
と訴えたところ、許可をくれたのだ。
なにやら、「耳垂れすぎ…プルプルしてんじゃねぇよ…っ、萌えるじゃねぇか!」という小声が聞こえたような気がしないこともないが、山本はよく意味が分からない。
そして部活動をしている山本よりも獄寺の帰宅が遅いのは、ツナの補習に付き合っているからだ。
十代目の御為なら…!
と息巻く獄寺であったが、日に日にどこか疲労の影が見えて、山本は心配だ。
だからあえて一緒にはおらず、こうしてご飯を作っているのだ。


それに。


今日は大奮発だ。
ツナの所にいる赤ん坊に、それはもう良いことを聞いたのだ。
だから、上機嫌で待っている。
やがて。
玄関の開く音に、山本はピンと耳を立てたのだった。






「ただいま……」
ツナの為ならば寝る間も惜しい。
本心から思っているそれに忠実に、ツナの補習を見ているが……なかなか進まない内容に、自分の教え方が悪いのだと獄寺は気が付いている。
「すみません、十代目…っ!」
玄関にある靴箱に片手をおき、がくりと項垂れた獄寺は、とととと、と軽快なリズムを奏でるスリッパの音に気が付いた。
愛らしい、彼にとって最愛のハニーがそこにいるはずだった。
いつも通りにとりあえず抱きしめ、とりあえず熱い口づけを交わし、とりあえず性感帯になっているらしい尻尾をひたすら弄ってやろうじゃないかと顔を上げた獄寺は、固まった。
がっちり、固まった。
今ならばほんの少しの衝撃で砕け散れるぐらい、固まった。
「や、やややややや山本……っ!?」
動揺に声が上擦り、思わず今し方閉じた玄関に背中を貼り付けてしまう。
いや、抱きついても良かったのだ。
だがあまりにも予想しなかった姿……。
「獄寺の為に着たのに……」
獄寺の動揺っぷりに、ショックを受けたのだろう。山本は僅かに項垂れた。
だがしかし。
と、獄寺は思う。
これで驚かないヤツがいるだろうかと。


ふわふわの耳。
愛らしい尻尾。

これはまあ、普通だ。
いや普通ではないのだが、普通としておく。

問題は。



「山本」
「うん?」
「その格好は何だ」
「応援する時はこの格好が一番だぞ! って小僧が」
「リボーンさんかよっ!」


いわゆるチアガール。
両手に持ったボンボンがチャームポイントだ。

山本は気を取り直したように、片手を腰、もう片手を振り上げる。
「フレーフレー獄寺!」
同時に足も振り上げる。
「フレーフレーご・く・で・ら!」
「って、ちょっと待てええぇぇぇっ!!!!!」
「?」
無理矢理足を上げるのを止めさせ、獄寺は荒い息をつく。
「何で山本」
「どうした? 獄寺」
「どうしたじゃねぇ! 何で下何も履いてねぇんだよおおっ!」
いわゆる、ノーパンというやつで。
「? コレの方が獄寺が喜ぶって」
「やっぱりリボーンさんかよっ!」
適当な方向に絶叫を入れつつ、獄寺はがくりと項垂れた。
ツナの勉強を見ているよりも疲れる。
非常に、疲れる。
が。
「獄寺……元気出ねぇ?」
山本が心底から獄寺を心配して応援してくれたのは確かなのだ。
彼を叱ることが出来るだろうか。
いや、出来ない。
そもそも邪な自分が悪いのだ。
こうして今も、スカートの裾を必死で覗いてしまいそうなのを堪えてしまうぐらいの。
「山本」
「うん?」
耳がふよふよ。
尻尾がふるふる。
スカートひらひら。
「とりあえず」
「うん」
「ベッド行くぞ」
真顔でがっしり捕まえて、獄寺は山本を引きずって寝室へと向かう。



山本は、とりあえず元気が出たみたいで良かったのなーと、また赤ん坊に恋のイロハを尋ねようと、(獄寺にとっては災難なことに)心に誓っていた。



みかちから、誕生日にもらいました!
うさ妻! うさ妻! ハァハァ…!(この萌えはとまらない
ありがとうっ、みかち!!!


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