■ベビードール
夏は暑い。
そんな自明の理屈は分かりつつ、半ば口癖のように繰り返してしまう日々だ。日本で迎える夏は二度目の獄寺にはいまいち判断もつきにくかったが、やはり今年はかなり暑いらしい。それは普段あまり冷房を使わず、扇風機だけで過ごすことが多いらしいとある家が、それこそずっとクーラーをかけていることからも証明されている気がした。一階の店舗部分をガンガンに冷やすことによる電力供給の関係からなのか、二階以上の住居部分ではあまりクーラーを効かせていなかったらしい。
さすがに今年は節電だか健康志向だかでの冷房控えは無理だったようで、すっかり猛暑の恩恵を堪能していた恋人は、それでも獄寺の家で首を傾げたものだった。
『……あれ? なんか、獄寺の家の方が暑い?』
『ハァ? んなことねえだろ、オレの家のが設定温度低いはずだぞ』
あれこれない知恵を搾り出してお泊まりの口実を作り出し、初めて恋人と一夜を過ごした翌朝だった。健康のためにはタイマーでクーラーも切った方がいいのかもしれないが、夜中でも気温が二十五度を下回らない熱帯夜では寝ている間の熱中症の方が怖い。そんな理屈でかけっぱなしにしている冷房なので、きっちりと二十八度という省エネ対策温度を守っている恋人の実家より、獄寺の部屋は随分と冷やされているはずだ。時折獄寺でも半袖では寒い気がするくらいなので、本末転倒な勢いである。
それにも関わらず、起きたばかりの恋人はやはり納得がいかないようで、まだベッドで座ったまましばらく首を傾げていた。ぼんやりした視線と、半開きになった口、なにより昨晩の行為の余韻を如実に示している肌に散らされた赤い痕が艶かしくて、獄寺は見ていられなくなる。
そう、前の晩は久しぶりに何回も、何時間も、体を重ねたのだ。
燃え上がったという表現がぴったりくるほどの営みを思い出せば、自然と顔が赤らんできてその意味でも獄寺は顔を逸らしてしまう。恋人が暑いと言っているのも昨晩の余熱が燻っているからなのでは、と内心埒もないことを考えていたところで、ぽつりと呟かれていた。
『……ああ、獄寺と寝たからかっ』
『なっ……!?』
まるで心の中を言い当てられたようで、獄寺はひどく驚いてしまった。
だがその声にからかう色はなく、思わず振り返ってしまって確認した顔にも騙すような様子はない。
つまり、本気でそう思っているのだ。
『や、山本……!?』
『んー……?』
まだ暑い、いや、熱い。
体が熱を欲して疼くように火照ったままなのかと、獄寺は振り返ったままゆっくりと手を伸ばす。そうしてパジャマ代わりにしているTシャツから伸びている腕をつかみ、顔を近づけていけば照れくさそうに確認された。
『あ……おはようの、チュウ?』
頷く代わりに唇を塞げば、熱っぽい吐息が漏れていた。
甘く誘うような温度に、ああ、やはり山本は宵越しの熱を持ってくれていたのだと獄寺は確信し、消火ではなく昇華してやるべく再びベッドに沈めてやっていた。
「……で、ビアンキ姐さんに相談したらな? それ、獄寺と一緒に寝たからだって言うのなっ」
「……。」
「ああ、そっか!! て、オレすっごく納得したのな!! さすが獄寺の姉さんだよなっ、姉弟そろって頭いいのなーっ!!」
初めて恋人である山本がお泊まりをしてから、約一週間。
再び巡ってきたチャンスに、獄寺は朝から浮かれたものだった。夏休み中の部活もない山本と、映画に行ったりバッティングセンターに行ったりと、普通の恋人同士のように過ごした。後者では若干普通ではない恋人のポテンシャルに慄いたものの、それも山本の個性だと思えば可愛く思えないこともないかもしれないという妥協を試みることも愛の偉大さだと自己欺瞞をしてなんとか暗示をかけたつもりの獄寺にとっては、本番は帰宅してからだ。
夕飯は出来合いのものと食材を買って帰り、山本が少しだけ料理もして食卓に並べてくれた。それを二人で平らげ、片付けをし、少しゆっくりしてから風呂に入る。
「それで、だったらパジャマを変えたらいいんじゃねえかって。わざわざプレゼントしてくれたのな!!」
「……そうかよ」
「獄寺からも、またお礼言っといてくれよな!! あ、じゃあオレ、シャワー借りるっ」
正確には湯船につかる風呂ではなく、シャワーを浴びてくるだけだ。その前に、と突然山本が語りだした内容は、先週の『起きたとき暑かった』という件だった。
単純に考えれば、いくらクーラーの設定温度は低くとも、誰かと同衾していれば一人寝より暑くて当然だ。当時獄寺が気付かなかったのは浮かれていたかったからであり、山本が気付かなかったのは山本だからだろう。だがそんな話を、どうやら獄寺の姉であるビアンキにしていたらしい。その名を聞いただけで若干腹が痛くなる錯覚に陥る獄寺だが、問題はそこではない。
ビアンキにもらったという新しいパジャマが入った袋を持ち、先にシャワーを勧められた山本はすっかり起き抜けの熱の原因に納得しているようだ。
これでは翌朝、手を出しにくい。
思わず頭を抱えてしまった獄寺は、姉からの嫌がらせに心底落ち込んでいた。
「くそっ、姉貴のヤツ……!!」
山本のことなので、どうせ『熱を昇華してやる』という口実で獄寺が朝から手を出したこともビアンキに話したのだろう。獄寺と山本が付き合い始めてから、ビアンキの態度は時折微妙だ。山本に対し、嫌ったりするほどではないようだが、かなり素っ気ないらしい。
おかしな偏愛をされている自覚はあるので、大方姑のような心境にビアンキは陥っているのだろう。そんな姉が、よりによってプレゼントまで渡したのだ。疑うことを知らない山本に、どうせサウナスーツでも着せてますます暑がらせるつもりなのだ。いっそ獄寺と寝ることすら嫌だと思うほど体温が上がるものに違いないと察しはしたものの、獄寺の姉ということで山本はビアンキにそれなりに懐いている。いずれ義姉になる相手からのプレゼントに喜んでいた山本にまだ何も言えず、見送るしかなかった獄寺は、またため息を深めていた。
「……。」
気分を落ち着かせるために雑誌を開いてみたが、気になって仕方がない。
山本はきっと、サウナスーツだろうが全身タイツだろうが、ビアンキにもらった『涼しく過ごせるパジャマ』とやらを着込んでくるだろう。
それに対し、ビアンキからの嫌がらせだから脱げと言うことは簡単だ。だがそうしてしまった場合、山本は恋人の実の姉から嫌われていると知ってしまうのだ。
変なところで家族というものに夢を見ている山本なので、気が引けてしまうかもしれない。
獄寺と別れるまでいかずとも、ひどく傷つくのは明らかだ。
そうと分かっていて、嫌がらせなのだと教えることはできそうもない。かといって、本当に涼しいのだぞと騙し続ける自信もない。
「姉貴め、ちょっと自分より山本のが胸がデケェからって目の敵にしやがって……!!」
思わずそう毒づいてしまった獄寺は、実はビアンキは山本に対して素っ気ないのではなく、面倒くさい性格の弟の相手は大変だろうと分かりにくく同情してくれているだけだとは気がついていなかった。このときも、おかしな解釈で姉の神経を逆撫でしている獄寺だったが、幸いにして失礼な独り言は姉の耳には届いていない。
要するに、時折山本に対するビアンキの助言が的外れなのは、無駄に弟を喜ばせないためなので、嫌がらせの対象はむしろ獄寺なのである。偏愛している弟だからこそ、その弟の少しズレたところもビアンキは心得ている。
だがそうして相手のことはよく見えているつもりでも、若干本人がズレているのはやはり獄寺とビアンキは血の繋がった姉弟だ。このときも、ビアンキは獄寺と寝ると暑いと訴えていた山本に対しては、本気で親切を施したつもりだったのだ。それが結果的に弟に対して嫌がらせではなく、正反対の方向になっているとは、まだビアンキも当然獄寺も気がついていなかった。
「……?」
雑誌を手にしたままあれこれ考えていた獄寺に、廊下から声が聞こえた気がした。
どうやらシャワーを浴び終わった山本が、『涼しいパジャマ』とやらに着替え、ほんとに涼しいと感動したらしい。そんな内容の声が聞こえたので、もしかするとビアンキは珍しくただの親切だったのだろうか。
怪訝そうに思っていると、ぺたぺたと裸足で廊下を歩く音が近付いてくる。そしてギィッと居間のドアを開け、入ってきた山本の姿に獄寺は視線が釘付けになってしまった。
「あ、獄寺っ……に、似合う?」
「……。」
はにかむように尋ねる山本は、一週間前にパジャマ代わりにしていたTシャツとハーフパンツよりは随分と涼しそうな格好だった。
むしろ、透けている格好だった。
幼い顔には似合わない大人っぽい色気漂うベビードールを身につけているが、実際に包まれている肢体は豊満なので遜色ない。ほとんどの部分がレース生地になっているため、透けている胸は色付いた突起も露わだ。胸を締め付ける下着がないため山本が歩くたびに揺れる乳房は、ベビードールが少し窮屈そうに見えるほどである。
どう答えればいいのか、似合うような、似合わないような、なによりもまず興奮していいものか、混乱している獄寺はいつの間にかずるずるとソファーからずり落ちてしまっていた。その前に立ち、不思議そうに見下ろしてくる山本に、獄寺はようやく違和感の一つに気がついた。
「……獄寺?」
「……。」
「えっと……?」
床にしゃがみこみ、思わずベビードールの裾をめくってしまっていた獄寺は、透けている下着がいつものものだと分かる。綿のような布地に、イチゴの柄がプリントされた幼い印象のものだ。豊満な肉体には色気漂うベビードールが似合っているのに、こちらの下着は幼くて変にアンバランスである。それでいて、これも山本らしいと言えば、山本らしい気がしてくる。
なにしろ、山本はこんな体つきをしていても、中身は幼いところが多い。逆に大人びすぎて戸惑うこともあり、極端な二面性を孕んでいるというのが山本の印象だ。そんな山本なので、この二つの下着のアンバランスさは不思議ではなかったのかもしれない。
だがそうにしても、透けすぎているベビードールに、この下着はやはりおかしすぎるだろう。
裾をめくったまま凝視している獄寺にしばらく戸惑っていた山本だが、やがて裾をめくる獄寺の手に触れると、おずおずと口を開いていた。
「あのな、ビアンキ姉さんがくれたやつなんだけど……その、パンツも、お揃いのがあって……。」
「ああ……?」
手を握られるような格好になり、促された気がして顔を上げた獄寺に、山本は少し顔を赤らめている。シャワーを浴びたばかりだからではない様子をじっと見上げていれば、やや恥ずかしそうに山本からは言葉が続けられる。
「けど、それが……その、結構透けてて」
「……こっちも透けてるだろ?」
「え? ああ、まあ、そうなんだけど、パンツが透けてるのは恥ずかしかったっていうか……!!」
そもそもパジャマをくれたと思っていたらしいので、替えの下着は持っていたらしい。そのため、ビアンキがくれたベビードールとお揃いの透けた布地の下着ではなく、元々持っていた下着をはいたということのようだ。
だが獄寺にしてみれば、そもそもベビードールが透けているので、今更という気しかしない。それ以上に疑問だったのは、どうせ透けるより恥ずかしいことになるのだろうにという今後の予定からだ。
「透けてるくれえ、大したことねえだろ?……どうせ、コレだってすぐ脱がされるんだからよ?」
「ふぁっ!? あ、獄寺ぁ……!?」
イチゴ柄の下着へと指を伸ばし、その筋を際立たせるように上から撫でる。それに驚いた山本が身を竦ませたところですっと立ち上がった獄寺は、片手で腰をしっかりと引き寄せて支えたまま、ぐるりと移動させてやった。
「えっと、獄寺、その……?」
先ほどまで獄寺が座っていたソファーへと山本を座らせ、ついでに背もたれの部分を倒しておく。そうして簡易ベッド状態になったソファーに仰向けに押し倒してから、獄寺はまずはベビードールへと手を伸ばしていた。
「んぁっ……!?」
「……こんないやらしいカッコして、なんだよ、誘ってんのか?」
「えっ、あ……んぁっ、ア、獄寺ぁっ……なんか、くすぐっ…たい、のな……!!」
脱がせるのではなく、緩めにつかんだ両手でしっかりと乳房を揉んでやる。すると透けた布地で肌が擦られ、山本はくすぐったいと訴えながら身を捩じらせていた。
だがもちろん、くすぐったいだけではないのは明らかだ。薄く透けた布をほんのりと押し上げるように尖ってくる突起に、獄寺は布の上からグリッと指で押し潰してやる。
「ふぁっ……!?」
「山本、気持ちいいんだろ……?」
摘もうとすれば、さらさらとした布地で滑ってしまう。それに焦らされるのは、獄寺ではなく、山本の方だ。物足りなそうな声を漏らした山本に笑いながらそう尋ね、ベロリと舌を這わせてやってもそれも布の上からだ。いつもの愛撫には程遠い感触に、山本は立てた膝をすり合わせるような仕草を見せる。無意識にねだっているのだと分かるそんな動作に、獄寺は片手で膝を割るようにして開かせてやり、しっかりと自分の体を入れて覆いかぶさっていた。
「獄寺ぁ……!!」
「なんだよ、ほら、言ってみろって?」
体勢を整え、獄寺は両手共を再び胸へと伸ばしてやる。そうしてベビードールの上から大きく揉みしだいていれば、山本は一度ビクンッと体を竦ませてギュッと瞳を閉じる。漏れかけた喘ぎを飲み込んだ後の吐息はたっぷりと温度を上げており、すっかりその気になっていると確信した獄寺に、山本はゆっくりと口を開いていた。
「ごく、でらぁ……手、放して……!!」
「……なに?」
「こんなふうに、しちゃ、イヤなのな……!!」
だが、たどたどしく告げられた言葉は、獄寺の期待とは正反対のものだった。
てっきりもっと強い愛撫をとねだるものだと思っていたので、思わず慳貪に聞き返してしまう。見ようによっては凄んでいる表情でも、山本なのでさして気にした様子もなく服の裾へと手を伸ばしていた。
「だから、これ……!!」
「……?」
何度か体を重ねれば稀に獄寺も全部脱いでほしいとシャツなどを引っ張ってくることもある山本だが、今その手が伸ばされたのは自らの服、ベビードールの裾である。元々ワンピースほどの丈もないため、仰向けになって身を捩じらせている間に臍が見えるくらいまでめくれ上がっていた。その裾を持ち、山本は自分で少しだけずらすような仕草を見せる。視覚としてはそもそも透けていた肌がほんのわずかに露になっただけなのに、直に拝むその白い肌が山本からの渇望のような気がして、獄寺は自分の中の熱が跳ね上がりそうだ。
「せっかく、獄寺の姉さんが、くれたのに……!!」
「あ、ああ……?」
「こんな、薄い生地だし。乱暴にしちゃダメなのな、破れたりしたらどーすんだよ……!!」
どうやら山本は少し怒っているらしい。
だがすっかり熱を溜めてそんなことを言われても、拗ねているようにしか見えない。思わず笑みを深めてしまいつつも、あからさまに返せば山本はますます機嫌を損ねてしまうだろう。そうなると面倒くさい、というよりも、男女の差など感じさせない身体能力の歴然とした開きで手に負えなくなると知っていた獄寺は、ここは寛容な恋人像を見せておくことにした。
「……ああ、そういやそうだな。悪かった、せっかく姉貴がくれてやった物、破ったりはしねえよ」
「ん……。」
そんなふうに約束してやれば、山本は安堵したように頷いていた。ベビードールの裾を持っていた手が自然と離れたところで、獄寺が代わりにその裾を持ってやる。そして一気に胸の上までめくり上げてやれば、山本は少し目を瞬かせたものの、すぐにまた小さく頷いていた。
「……ん」
「山本……。」
そうして露になった乳房に今度は直接獄寺が両手を伸ばしていくのに合わせて、山本は薄っすらと口を開いて誘っていた。
そういえば、今夜は始めてからまだキスをしていない。
唇の間からほんの少し覗いた赤い舌でそう思い出しつつ、獄寺はしっかりと自らの口で塞いでやっていた。
セックスはまだ二ヶ月でも、キスだけは一年ほど教え込んでいる。付き合い始めて半年という計算では合わないという件には言及しないように心がけ、獄寺は最初から舌を差し込んで深いキスを施していた。
「んぁっ……あ、んんっ……!!」
いつの間にか頭を抱えこむようにして両腕でしっかりと獄寺の頭を引き寄せた山本は、獄寺のタイミングを覚えてちゃんと舌を絡め返す。気持ちいいことを素直に認めることができる山本の舌も、たっぷり時間をかければ今では半ば性器のようなものだ。ずっと嬲ってやっていればそれだけで軽く達することも知っているが、今夜は獄寺の方が持ちそうにない。片手ではこぼれそうなほどに育った白い胸を揉みながらそう考えた獄寺は、やがて軽く手を動かしてすっかり硬くなっていた色付いた突起を指先で両方ともキュッと摘んでやっていた。
「ふぁっ……!?」
「山本、先に進んでもいいよな?」
大きいほど感度が悪いというのは山本にあてはまらないようで、ぐにぐにと指先で押し潰して転がすように刺激してやっていれば、鼻から抜けるような声を漏らした山本は小さく何度も頷いている。その瞳は既に潤み、小刻みに上がる息は上気した肌をも色付けさせたようだ。
すがるようにして足で獄寺の腰を挟んでくる山本に促された気もして、唾液が糸を引いていた唇に獄寺はもう一度キスを落としてやる。そうして唾液を切っておいてやって、まずは頬へ、それから首筋へと唇を寄せてやっていた。
「んっ、あ……獄寺ぁ……。」
鎖骨にはたくし上げたベビードールの布地がたまっていたので諦め、大きな山を飛び越えるようにして豊満な胸へと口元を寄せる。
「んぁっ!? ア、や、あぁっん……!!」
「山本……。」
そして片方の乳房のてっぺんで色付いて主張した突起を口へと含めば、山本はまた甘ったるい声を漏らして身を捩じらせていた。
それだけで豊満な胸はまた揺れるが、しっかりとした弾力で獄寺の手へと戻る。片方は指で突起を弄ってやりながら、口へと含んだ方では舌でねっとりと舐め上げていれば、山本はますます感じ入ったような息を漏らしていた。
「んんっ、あっ……あ、ん、獄寺、獄寺ぁ……!!」
歯は立てずに唇で食むようにしてやってから、舌で突くようにして撫でてやる。それから一度強めに吸えば山本がビクンッとまた身を震わせたので、少し笑いながら獄寺は口を外してやっていた。
「山本、気持ちよかったか?」
「ん……。」
色付いた突起から肌を滑らすように舌を這わせ、胸からその谷間へ、更に下へとおりていく。
すっかり息が上がってるので少し早めに上下している上体を過ぎ、腹や臍を舐めた後、獄寺の舌は山本の下腹部へと辿り着いていた。
「え……あ、獄寺ぁ……?」
それに山本が戸惑ったのは、くすぐったさではなく、脱がすことなく獄寺が舌を這わせたからだろう。たくし上げたベビードールとは違い、そこを覆う下着に獄寺が脱がす目的で手を伸ばすことはない。指先で布の上にくっきりと割れ目を筋として浮き上がらせてから、獄寺はそのまま舌を滑らせていた。
「んぁっ、ご、獄寺ぁ……!?」
舌で筋をたどり、更に軽く吸い付くようなキスも施す。だがそれらの愛撫は、すべて下着の上からなのだ。すっかりそこも開発されている山本にとってはもどかしく、戸惑うように名を呼ばれてから獄寺はようやく答えてやる。
「なんだよ、テメェが言ったんだろ? 透けてるのは、恥ずかしいって」
「え……あ、言ったけど、でも……?」
「透けてるだけで恥ずかしいんなら、脱がされてなんも着けてなかったらもっと恥ずかしいよな? そういう気遣いだっての」
いかにもとってつけたような理屈だとは思ったが、獄寺は言うだけ言うと再び大きく脚を開かせた間に顔を埋めていた。
どれだけ舐めようが、下着の布が破れたりするはずもない。だからこそ逆に強いくらいに口でも全体を食むようにしてやったり、舌で唾液がしみこむほど筋を撫でてやっていた。
「んぁっ、あぁっ、獄寺ぁ……なんか、これ、やぁ、なのな……!!」
心なしふっくらしてきた気もする布越しの襞は、その奥が下着にしみこんだ獄寺の唾液とは違う液体で濡れているようだ。もどかしそうに山本が踵を滑らし、腰が揺れるたびにクチュクチュというわずかな水音が下着の奥から聞こえてくる気がする。それでも獄寺が頑なに下着越しに舐め、すうっと筋を舌で上へと撫でたところで、山本が小さな悲鳴のようなものを喉で殺していた。
「や、あぁっ……!?」
「……イッたのか?」
もちろん分かって突起のような部分も刺激してみてやったのだが、身を竦ませたままの山本は何度も首を振っている。
それは恥ずかしがって認めないのではなく、どうやら本当に達するまではいかなかったからのようだ。弛緩しきらない体からも、ゆっくりとあげてきた視線からも、山本はもっと確かな愛撫を求めてきていた。
「なあ、獄寺ぁ……イジワルしねえで、ちゃんと、して……!!」
そして言葉でもねだってきた山本は、包皮をめくることなくしかも下着越しではまったく物足りていないようだった。思わず満足そうな息が漏れ、獄寺も体を起こす。手際よく自らの前を寛げていきながら、逸る気持ちを何とか抑えて獄寺は確認をした。
「でも、恥ずかしいんだろ?」
「……いつも、恥ずかしいけど。けど、もういいのな、獄寺にしてほしいから、いいのな」
「恥ずかしいの、我慢するってことか?」
ポケットに入れていた物のパッケージを開け、下着の中から出した猛ったモノへとゴムをかぶせておく。そんな仕草をぼんやりと見つめていた山本は、やがて会話が理解できたのか、小さく首を振ってから答えていた。
「……恥ずかしいのも、気持ちよくなってきたから、もういいのな」
「……。」
どうやら、我慢するのとは違うと言いたいらしい。
だがせっかく準備万端にしたところで、獄寺はうっかり軽く出してしまいそうになった。そう教え込んだのも獄寺であるが、あからさまにねだられると照れて困る。もっと困るのは興奮しすぎて早く出してしまいそうになることで、男としてあまり早いのはプライドが許さないと思いつつ、獄寺は深呼吸で自らを落ち着けてみていた。
「獄寺ぁ……?」
「……山本、楽にしてろ」
だがそうして肺いっぱいに吸い込んだのは、甘ったるく山本がせがむこの淫靡な空気だ。
多少頭が冷静になったところで、こんな据え膳だと認識できるようになるほど、体の方は暴走してしまいそうになった。
そこに折り合いをつけるには、この熱を貪ってしまうに限る。どうしてもそう宣言してしまう獄寺に軽く目を瞬かせた山本は、やがて嬉しそうに笑うと、両手を今度は獄寺の背中へと回してギュッと抱き寄せていた。
「ん、獄寺ぁ……。」
「山本……!!」
促されるように腰を寄せた獄寺は、そこで少し悩む。だが結局は脱がせる手間より早くこの甘い体を味わいたくて、下着の横に軽く指を引っ掛けてずらすようにしていた。すると、さらされた秘所は下着との間に粘り気のある糸を引いていた。明らかに獄寺が舐めた唾液ではないその液に、ゴクリと生唾を飲み込んでから、獄寺はゆっくりと先端を潤った箇所へと押し当てる。
「んっ、ああぁっ……!!」
そして、閉ざされた隙間に捻じ込むようにして、硬くなった性器を一気に押し込んでいた。
「くっ……!!」
「んんっ、あ、獄寺ぁっ……!!」
「山本……!!」
開発しきっている自信はないので、獄寺はいつも挿入の前に指で慣らすような愛撫をしていた。実際にそれで山本のココが開きやすくなるのかは謎だが、少なくとも精神的には準備ができるはずだ。それを、今夜初めてせずに進めてみれば、入りはしたものの、いつもよりはきつい。
だが、眩暈がしそうな熱さだ。
心地良い締め付けよりは若干痛いくらいでも、これぐらいの方がいい気すらしてくる。
「山本、動いて、いいよな……!?」
「んっ、んん……ふぁっ、ア、んぁっああ……!!」
腰がしっかりと密着したことで、足を押し広げていた両手を外し、再び覆いかぶさる姿勢で胸へと触れる。酩酊しそうな熱に翻弄されていても、このベビードールだけは破るようなことになってはいけないと思いつつ、獄寺は強く胸を揉みしだいて腰を揺らし始めていた。
すると、最初はやや体を硬くしていた山本も、次第に弛緩させてゆるゆると腰を合わせるように揺らしてきていた。獄寺の律動に合わせ、山本も咥えこんだ箇所を収縮させる。甘く漏れる息は徐々に重なっていき、繋がった箇所がたてる水音は互いの快楽を象徴していた。
「あっ、アァッ…ん、ごくでらっ、ごく、でらぁ……!!」
「山本、オレ、も……!!」
背中に痛いくらいに立てられた爪で、そういえば切ってやるのを忘れていたと思い出した獄寺だったが、猛りきった熱は弾ける寸前だ。
熱い内壁が獄寺のモノを包み込み、もっと奥に熱を叩きつけてくれと促している。
ゴムに覆われた状態では、それは叶えてやれない。
だがいつかきっと、と思いつつ一際深くまで山本の中を犯してやれば、突き入れた直後に山本の嬌声で中がキュウッと収縮していた。
「ふぁっ、あ、ああああぁぁぁっっ……!!」
「うぉっ!? くっ……!!」
先に達した山本につられるようにして、獄寺もまた若い精を放つ。
ゴムの中にとはいえ、痙攣するように吐き出すものを、どくどくと熱く収縮を繰り返すような錯覚で山本もまたすべて搾り取ろうとしているようだった。
そうして達してしまえば、脱力感で思わず倒れこみそうになるが、男としてそんな無様な真似はできない。そう思い、なんとかソファーに肘をついて耐えたにも関わらず、下から思いきり引き寄せられて結局ドサッと獄寺は山本の上に倒れこんでしまう。それに、そもそもキスをしてやろうと思ったのだと自分に言い訳をして誤魔化した獄寺は、まずは絶頂の余韻が残る山本の吐息を飲み込んでやるために深いキスを施してやっていた。
「……なあ、獄寺。オレのパンツ、汚れちゃったんだけど」
「あ?……ああ、そうだな」
それからソファーでもう一度し、ベッドに移動してから散々体を重ねたことで、日付はすっかり跨いでしまっている。ようやく疲労を感じて互いにシャワーを浴び、ベッドを整えて寝ようとしたところで獄寺は山本から拗ねたように告げられていた。
結局、破れはしなかったもののビアンキからもらったベビードールはベタベタになってしまったので、パジャマ代わりにできなくなったのだ。だがそれ以上に身につけられなくなったのは、イチゴ柄の下着である。そう思えば、シャワーを浴び、裾が長めの獄寺のシャツをパジャマ代わりにしている山本は下着をつけていないのだろうか。思わずシャツの裾へと手を伸ばしかけた獄寺に、山本がパッと飛びのいていた。
「もうっ、めくっちゃダメなのな!!」
「ハァ? いいだろ別に、というか今更だろうがっ」
山本はさすがに終わった直後は少し失神するようにして眠っていたので、シャワーは獄寺が先に浴びてきたのである。上がってから山本を起こし、シャワーを浴びてこさせている間にシーツを掛け直して獄寺はベッドに座って待っていたのだ。
シャワーに向かうときはまだ眠そうで足元も覚束なかったのに、今飛び退ってみせた山本の動きは俊敏だ。もう回復したのかと感心する反面、逃げられると追いかけたくなってしまう。ベッドから立ち上がり、捕まえようと手を伸ばせば、それもギリギリでかわした山本は獄寺の横をすり抜けて先にベッドに上がっていた。
「おい、山本……。」
「獄寺っ、もう疲れたから寝るのなっ。早く、早く!!」
「ったく……。」
疲れたからおやすみなさいとタオルケットをかぶられれば、ムキになって剥がしたかもしれないが、早く一緒に寝ようと広げて待たれれば怒ったふりすらできなくなる。精一杯仕方なさそうに苦笑してベッドに戻った獄寺は、山本の足へと視線を向ける。裾の長いシャツなので、足の付け根は見えそうで見えない。下着をはいていないのか、あるいは仕方なく最初にはいてきたものを再びはいたのか。そんなことを考えていると分かったのか、山本は嫌がるようにタオルケットを掛けると獄寺をベッドに引き倒していた。
「おわっ……!?」
「獄寺、ほら、おやすみなさい!!」
仕方なく、獄寺もベッドで体勢を整え、手元のリモコンで照明を消してやる。するともぞもぞと擦り寄ってきた山本に、獄寺は寝入る前に尋ねていた。
「……で、見ねえから教えろよ。気になるだろ?」
「んー……。」
薄暗い中で山本の髪を撫でていれば、獄寺も次第に意識が薄れてくる。気になって眠れないと思っていたが、疲労の方が大きいらしい。加えて、こうして可愛い恋人と一緒に寝ていれば気分もよくなって当然か、と欠伸を噛み殺して寝ることにしたところで、眠そうな声で答えられていた。
「……透けてるから、見ちゃダメなのな」
「……。」
「……。」
「……バカ、寝れなくなっただろうが」
言うだけ言って寝息を立て始めた山本と違い、獄寺は一気に目が覚めてしまった。
どうやら山本はビアンキにベビードールとセットでもらった下着を、はいているらしい。是非拝んでみたいと思ったが、とっくに照明を消してしまっている。わざわざつければせっかく寝始めた山本を起こしてしまうだろうし、その理由を知られれば暴れられるかもしれない。
そんな危険な真似はできないと分かっていても、目がギンギンと覚めてしまった獄寺は、やはり朝涼しかろうが山本をヤろうと心に決めて、ようやく安心して眠ることができた夏の夜だった。
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だってバケラッタがエロれって(言い訳)。
最初の絵に無理矢理合わせて、前後こじつけてみたうっかり具合でした。
しかし、童顔巨乳にベビードールは萌えすぎて、たまらん…!!!!!
バケラッタ、ちょーありがとう!!!!!!
て。
お礼言ってるけど、何故だか上手くノせられてしまった気分です。(ワオ!)
ロボっぽい何か
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